1話 現実世界
初投稿です。
どうやら、俺は死ぬらしい。
横断歩道を渡っていると、不意に音がした。不快な金属音はやがて俺のもとにやって来て、俺のことを邪魔だと言わんばかりに貫いては去って行く。
数回ほどそれが続いたあと、視界が赤く染まる。それが自分の血だと気づく頃には、すでに手遅れだった。
「やっとこのときが来たんだな……」
不思議と笑みがこぼれていた。普通なら恐れ、泣きわめくか諦めるであろう状況を笑っていたのだ。
意識が遠退いていく感覚が、心地よい。さよなら人生。さよなら世界。
俺は重くなってきたまぶたを閉じ、意識を手放した。
けたたましい音が鳴り響き、俺は目を覚ました。カーテンの隙間から日差しが差し込んでくる。
眠気を無理矢理押さえつけ、体を起こす。寝起きの体に鞭を打つべく洗面台に向かい、顔を洗う。
眠気を覚ましたあと、高校の制服に着替えてリビングに向かうが、誰もいない。
俺、三島優斗は一人暮らしをしている。父親の都合で海外に引っ越すことになったのだが、俺だけはそのまま家に残ったのだ。
理由はいろいろとあるが、一番の理由を聞かれたら即答できるだろう。大好きなアニメのためである。
優斗は重度のオタクであり、もはや二次元以外に興味はないというぐらい重症だ。
しかし、それでいて運動部に負けずとも劣らない運動神経に、175センチと高めの身長とほどよい筋肉。顔立ちも整っている。本人は興味ないようだが、女子からの人気も高い。
しかし、そんな生活に優斗は満足していなかった。
彼の理想はよくある超能力系の話である。
ある日突然超能力に目覚めた主人公が、美少女に囲まれながら世界を救う。王道だが、だからこそ面白い。これこそ優斗の理想であり、夢なのだ。
しかし、そんなに現実は甘くなく、理想は簡単に現実に打ち消されてしまう。
理想を追い求める日々。もともと運動神経は悪かったが、その理想が現実になることを信じて努力をし続けた。他人からしたらおかしな話かもしれないが、優斗は本気だった。
ゲームをやることで戦いを学び、本を読むことで精神を鍛え、アニメを見ることでヒロインの落とし方を学んだ。
そんなことにつぎ込んだ人生だが、優斗は後悔をしていなかった。それどころか、胸を張って誇れることだと優斗は思っている。
今日も体の調子は良好。夜更かしをしてアニメをみる生活に体が慣れたため、一日の睡眠時間が少なかろうと支障はないのだ。
不意にチャイムがなった。インターホンにでると、聞きなれた声が聞こえてくる。
「おはよう優斗、早く出てこないと遅刻しちゃうよ」
彼女の名前は新川咲。昔からの付き合いでいわゆる幼馴染みだ。栗色の髪は短めに切られており、いかにも動きやすそうだ。身長は158センチに体重は43キロぐらい(本人は教えてくれないが、これぐらいだろう)と細めである。
家が隣り合わせということもあり、双方の両親の交流があった。今は優斗の親がいないこともあり、たまに咲の両親に面倒をみてもらっている。
「ほいほい、いま行くわ」
適当に返事をしつつ、出掛ける支度を始める。弁当を鞄に入れると、それを肩にかけて靴を履いて家を出る。
軽く笑顔を交わした後、二人は歩き出した。




