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C 10to12

まあ、あんな事があったから、じゃないかもしれないけれど。

アレから理由もなく僕は一週間学校を休んだ。

両方の意味で無責任だと思うと、吐き気がして、また吐いた。

でも、先輩はいっているらしいから大丈夫だろう、きっと。


そんな中、何も言われない方がキツイって解っているから、なのか。


アイツは時たま、小言を言っていた。

「じゃあ、僕は帰るよ。またね。正確に言えば二ヶ月後、かな? バイバイ」とか何とか言ってアイツは出ていった。

ああ、「帰る」っていうんだな。「戻る」んじゃなくて。そう思うと、更に気が重くなって。


そしてその翌日の今日。


「そろそろ行かないと、正直、唯でさえギリギリな出席日数、やばいんじゃないかな?」


という(メール)で。根本的あところでアイツに逆らえない俺は、学校に出ていった。


授業やその他は、いつも通り。そう腫れ物扱い(いつもどおり)だった。


さて、そんな放課後。俺はまたもや躊躇っていた。そりゃそうさ。どんな顔して会えばいいんだよ。というか会えてたまるかよ。


気丈に振る舞えるわけがない。仮面で隠しても、この間のようにもう僕はボロを出している。


長い廊下を歩いて生徒会室の前まで来ていたのはもう癖になっていたからか。



扉にかけたてがカタカタとふるえる。そんな季節じゃないのに、汗が出る。


オレンジ色の孤独な世界で、葛藤する俺はどんなに滑稽なんだろうか。



泣きそうなそんな表情が、すりガラスに歪んで移る。



そんな時に、突然引っ張られた。







10.My dear you.


「いっ!」


「あ、痛かったっすか!?」


「ったり前だろうが!」


「フヒヒ、サーセン!」


埃の積もり様からして、やっぱり長いこと使われていないようだ。そんなソファーに押し倒された。

幸い。スプリングは聞いているようで、背中は痛くない。

身体の上に軽い何かが、冷たく暖かい何かが乗っている。

揺光(オレンジ)を乱反射する中で、それを塗り変えるような最開桜花(フルブロッサム)


桜幕千愛里がそこにいた。


何時ものような、長い髪を束ね損ねた様な髪で。何時ものように桜色の唇に笑みを浮かべて。何時ものように桜色の瞳に。





俺を映して。







11.Allergy.


「改めまして、おひさっすセンパイ!」


「おう。ところで桜幕後輩。少し聞きたい事があるんだが?」


「千愛里」


と、呼べと? 先輩ですら名指しじゃないのに、何をいてるんだコイツは。


「呼んでくれないと話さないし答えないっす!」


……ええい、回した腕に力を込めるな暑苦しい。


「千愛里」


「なんすか!?」



さて、スーパー言い訳タイム。

答えないというなら仕方ない。俺は露伴じゃないから、断ってもそれを覆すことが出来るような人間じゃないんだ。

それよりも。


んどれは(あなたは)なんばしよん(なんてことを)じゃ(するんですか)コラァァァァアアア、あ?」


「答えないとダメっすかね!?」


「答えないとだめっすね」


Why and for what?

それを聞かない限り、アレルギー持ちの俺をこの(アレルゲン)の伏魔殿に連れ込んだことを許す気はない。

ああもう、鼻が詰まってきた。


「お前、アレルギー性鼻炎持ちにこの環境はキツイんだぞ!」


「知ってるっすよ! 鼻が詰まってきたっすったから!」


お前もかい!








12.I just wanna.


「たまには歩きながらじゃなくて、座って話がしたかったんすよ!」


「座るどころじゃなくリラックスしてる気がするがな」


二人して寝っ転がってるわけだし。重くはない。寒くもない。柔らかい。決して嫌なわけじゃないんだ。

だからって、この距離感はないんじゃないか。付き合っているわけじゃないのだし。

いやまあ、付き合っているからってこの距離感がいいかといわれれば甘い、甘ったるい、口から砂糖が吐けそうな感じだけれど。



そして少し足りない気がしないでもないけれど。何がとは言わないし、何がかは分からないけれど。

脳裏によぎったのは……



「嫌っすか!?」


「いや、別に」


どちらかと言えば心地良い。何なのだろうかとも思う。だって。


俺は逃げていたはずだ。正面から向かい合いたくなくて。怖くて、痛いのが嫌で、彼女のその気持ちが恐ろしくて。


でも何か起こすわけでもない。単に時間がどうにか解決する迄、落ち込んでいるだけなのだろう。

ああ。最悪だ。そう表も動かない俺は、最悪だ。


「センパイ、どうしたんすか!?」


「いや、なんでもない。なんでも」


いいやつだな、と思う。

こんな俺を心配してくれるなんて。


そして、いつもよりも落ち着いた声で。



「いいんすよ、別に、気にしなくても。私は、先輩が変化しないのがいいって、変わらないほうがいいって思ってるって知ってますから。だから、何もしなくていいんすよ。応えてもらえなくても、私の気持ちは言葉にできなくても」





呼吸が出来なかった。安心感と罪悪感が、虫唾のように込み上げてくる。


「なん、だよ、それ」


俺の胸に埋まっているから、千愛里の顔は見えない。


「センパイ、前言ってたじゃないっすか『変わらないほうがいい』って」


「それは」


「それでいいんじゃないかって、先輩が望むんならそれでいいじゃないかって」




そう言いながら上がった顔は。



「でもそれじゃ切ないから、こうしてるんすよ」



泣いていた。


「鼻炎っす」




さいですか。

今回は短めです。すみません。

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