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CALL 2

『で、相談は近くの知人より遠くの他人って訳かい? いい具合に都合がいいね。いや、言葉に語弊があっちゃいけないから言うけれど、僕としては構わないんだよ? いや、興味がないし他人ごとだから、なんてことなわけじゃない。僕はね、頼られるのもアテにされるのも大好きなのさ。へ? 殊勝なもんだって? いやいや君、僕は人類の味方で友なんだよ? 願望を叶えることになんで躊躇しなくちゃならないのさ? ましてや君はとりわけ僕の友人だろう? なら、僕が手助けすることに何の遠慮がいるのさ。だから気をつけてね、ワトキ……いや、|肴菜(ghoti)。僕に何かを願う時は、その願いのかなってしまう時なんだから、譲渡も遠慮も配慮も一切の呵責もなく叶ってしまうからさ。さて、何に都合がいいって言ったかっていうのはね、ほら、通信なら切れるじゃない。耳にいたいこととか、聞きたくない正論を相手が振りかざしたりした時にさ。本当に、文明の利器ってのは人を豊かにしつつ貶めるよね。プラマイゼロ、なのかな?ああ、そういえば、ところで相談とはなんなのかな?』


「延々二時間にわたって説明したはずなんだが、いきなりそれか……」


『いやあ、しょうがないじゃないか。はっきり言って、答えが出てる口ぶりなのだし。迷うことは無駄、とまでは言わないけれど、延々とそうするのは非生産的じゃないかな?』


「はあ……まあ、そうなんだけどさ」


『しかし背中を押してもらうための相談だなんて。気もまたずいぶんと女性的な一面を持っているんだね』


「女々しいって言いたいのかよ」


『いやいやまさか。いや、まあ、そうとも言えるかな?考えても見れば、女々しいだの男らしいだのって、その異性に使う言葉じゃない?男が男らしいのも、女の子が女の子らしいのも当たり前なわけだし』


「あー、まあ……それはそう、なのか?」


『で、コウメちゃんの事だっけ?先日のお礼とやらはうまく言ったのかな?いやほら、よくよく考えてみれば、僕自身女性扱いでプレゼントを貰うから感想は言えるんだったな、と思って気にしてたんだ』


「なあ、言いたいことが二つあるんだが」


『何かな?』


「お前との会話で先輩の名前を出したことはない。なんで知ってんだ?あと、女性扱いってなんだ。女性扱いって。お前間違いなく成人男性だって言ってたじゃないか」


『まず一つ目は秘密かな。そのほうがカッコイイし。そして二つ目は、僕は間違いなく成人男性だよ?見た目はともかく、戸籍上はね。あくまで、戸籍の上では』


「戸籍の上って」


『まあ、いいじゃないか僕のことは。問題は君の方だろう?実情、一体どうするんだい?三角関係(トライアングラー)なんだろう、まるで全く正に見事な』


「……」


『君の優柔不断の招いた』


『いいかげんにして欲しいものだよね、ほんとうに最近の主人公(オトコノコ)は。いや、もう、正直知り合いじゃなければ押し倒してるよ』


『いいかい、肴菜君。物事には限度ってものがある。ぼくはね、基本的に誰がどれだけ恋愛をしようが知ったこっちゃない。でもね、君』


『でもね、優柔不断は何も招かないよ。不幸だけ。ほら、時間は流れてる。変わらざるをえないこともある』


「……じゃあ、どうしろってんだよ」


『自分で考えなさいな。そんなことは』

「なんだよそれ」


『きみがね、変化が嫌いだって言ったのを僕は覚えてる。それはそうだね、うん。知らないものは怖いもの。怖いんだからさ。恐ろしさの根源はなんといっても未知だからさ』


「……」







『だから逃げるんだろう? 』






「っ!!!!」


『君の気持ちなんて知らないし、ああ、いやまあ解っては居るんだよその心境は、それはともかく』


「んで、そういうっ……ああ、っ!」


『ああ、ストップストップ。切っちゃやーよ?これだから電話ってのは困るよね。切れるし、嫌なら耳から離せばいいんだし』


「……それが、利点だろうが」


『そうかい?それとても副次的なものだと思うけれど……なあ、肴菜君』


「……なんだよ」


『僕は、どこぞの変態親父のように君の傷口を切開しようって気はないんだよ。たださあ、ねえ?やっぱりいけない。このままじゃいけないよね?だから』


「だから?」






「だから、いざ推参しよう(おしてまいろう)じゃないか、君のもとに」






夜風を切り裂いて、回る一対の二重反転ティルトローター。灰色のロービジ塗装に、大型バスほどもある大きな胴体。

知る者が見れば、アメリカ合衆国のベルとボーイング・バートルが共同で開発した鶚の名を冠したティルトローター機、V-22オスプレイに良く似ていると気がついただろう。

もっとも、オプスレイはローターは一重である。加えて周囲にそよ風程しか余波を与ず、しかも殆ど無音で市街地に飛来するなんてあり得ないだろう。


『「ちゃお」』


受話器越しの声と肉声が被る。

屈強な黒人の男が、スライドドアを押し開ける。そのちょうど真ん中に、無骨な軍用機には似合わない豪奢な椅子の上に。

受話器を耳に当てた人物が座っていた。

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