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wicca

夢を。幻想(ユメ)を見ていた。


彼と会った頃のことを思い出して、私は頭を抱えて、泣きじゃくる。


サメザメとしたような、ハラリとしたような、そんな美しい涙じゃない。


恥も外聞もないかのように、私は唯泣きじゃくった。


赤子のように、稚児のように。


最近は何時もそうだ。一人でいるときはないてばかり。ここから見える空が橙色に染まるまでに彼がこない日は、もう彼には会えないから。


そう思うと、余計に悲しくなって、私は更に声を上げて泣いた。

誰もいないからイイヤ。嗚咽が狭い部屋の中に響いていた。

ハンカチの半分が濡れた頃、今日も悲しいオレンジ色の生徒会室。


「……ううう」


泣きべそをかきながら、私は書類を整理していた。

肴菜君は今日も来ない。でもいつ来てもいいように私は彼の文まで書類をまとめる。事務仕事は得意だから。

涙が書類に落ちないように、カリカリと筆をすすめる。


虚しくなってくる。


こんなコトしていても仕方ないかもしれない。けれど、何かしていないとどうしようもない。


ひっく。ひっく。


横隔膜の痙攣が始まっている。なんて冷静に言ってる場合じゃない。それはそうなのだけれど、冷静なワタシ(コオリノマジョ)がそれを許さない。







「……終わっちゃった」


決済待ちの分がかなり溜まっている。それはそうかも。もう二週間は来ていないし。


それでもある程度滞り無く進んでいるのは、この生徒会に与えられている権限が本当に大したものじゃないから。



じゃなきゃ、こんな風に会長が休んでいても教師が何も言わないなんてありえない。

それはそうだ。高校生に与えられる権限なんて、こんなものだ。

いっそ、彼を強制的に呼び出せるぐらいの権限があればいいのに。


なんて。


私はまた、そんなくだらないことを妄想して、自分を慰めて、忘れようとした。



そうじゃないと、溢れてしまう。


私は魔女だから。

芒月小梅は魔女だから。


彼が好きで、彼のそばに入れればよくて、彼のことを感じられればよくて。

彼をカセにして気持ちを押さえ込んでいた。




だめだだめだ。こんなふうに落ち込んでいては、彼が来た時に私じゃなくなってしまっているかもしれない。

変化を嫌う彼の前で、それでも今までの私じゃいられないかもしれない。


知らなかったんだ。好きだったのに。彼が変化が嫌いだったなんて。


ごめんなさい。


償い方が分からない。謝り方が分からない。会えないから。





指先がヌルヌルする。カッターで、指ごと切ってしまったようだ。刃物を受かっている時に考え事をするから……

ドロリとした黒赤色の液体が溢れる。

テープだらけの指先たちが赤く黒く染まっていって、まるで私の心象風景のようだった。

痛みはない。絆創膏は、もう無い。



橙色の中。私は赤く染まったハンカチを巻いた手で、書類をまとめて部屋を出る。


私はこの長い廊下が嫌いだ。歩くだけだから、また考えてしまう。思い出してしまうのだ。

嫌な事を。嬉しかったことを。楽しかったことを。



長い廊下。その一箇所の窓が開いている。もう冬の匂いがする、そんな風。


オレンジ色の光が、溢れこんでくる。

その先を見てみると、敷地内が一望できた。


広い。

ここは校舎群の中でもかなり高いほうだっけ。


ここから見渡すかぎりが、全て館鬣(タテガミ)学園の敷地だなんて、今さらながら吃驚する。


その全てが、橙色に染まっている。

でも。




塗り潰されるような夕焼けの空の下で、決して染まらない桜の色の光が在った。

そしてその横に、私が恋しくて仕方ない、くすんだ金色(ダーティブロンド)も。













なんなの。なんなのよ。



なんで。なんで。



なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで。


私が変わってしまったからなの?私が君に告白したからなの?私じゃなんでダメなの?変わってしまうから?変えてしまおうとしたから?私が君を好きだから?


わかんない。いたいよいたい痛いいタいいたイいたい痛イいたiいたいいtaいいたいitaいいたi痛いいたい。わからないよ。


割れた窓ガラスが、赤黒く染まる。


そんなに変わらないのがいいの?そんなに彼女がいいの?




そんなに私が嫌なの?

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