1to7
放課後、生徒会室はオレンジ色に染まる。
夕日、斜陽。傾いた太陽。
当然のことながら、部活動もせず、椅子の上にあぐらを書いて、欠伸をする。
長々とした校長の朝礼から始まった月曜日。その放課後。
とはいえ、これこそが日常。なにか変わるでもなく、なにか起きるでもなく。
青春と情熱を浪費する毎日のただの一日。
今日も今日とて、そんな日の筈だった。
そう。そのはずだった。
1.She is a witch.
「肴菜くん」
「なんですか、芒月先輩」
「私が魔女だって言ったら、驚くかな?」
「いいえ」
「え?」
「え?」
「ごめん、なんでもない」
彼女は。芒月小梅は。
笑いながら。菊盃肴菜に。冗談を言った。
それを少なくとも肴菜は冗談だと思った。
よくわからん。
何を。何故こんな事を言ってるのか。全く。
それが、ファーストインプレッション。
2.As you can see.
「えっと、その顔は、もしかして信じてもらえてない、かな?」
「はい。全く。だいたいすでに一部界隈では魔女呼ばわりでしょうが」
氷の魔女とか永久凍土の女王とか、厨二病ですか。
「だから信じるもクソもありませんよ」
当たり前。
至極当然にして単純明快なまでに明示している。
それが。この表情。
変なこと言ってるやつを目の前にして変な顔をしないわけがない。
これが普通なのだ。
そして、彼女の眉尻がさがる。
「……えっと、ずっと見つめられると少し恥ずかしいんだけど……」
は?
「あ、あのね、いくら魔女でも照れるんだよ?」
知りませんよそんな事。
3.And so.
「失礼ながら、芒月先輩。一言いいですか?」
「あ、うん。何かな? 先輩何でも答えちゃうぞ。あ、え、えっちなの以外、だけど……」
「……もういいから帰ってください。放課後ですし」
めんどくせえええええええええええ。
4.where on earth?
「具体的にどういうことなんですか」
「えっと……どう言えばいのかな?」
知りませんて。本当に、まったく、これっポッチも。
「それを知って何になるんです?」
「いや、特に無いんだけど……えっと……怖いかな?」
「いいえ全く」
「えと、本当に?」
「はい」
幽霊とか信じていないし。
「そ、そっか…………えへへ」
……一一九番したら、魔女狩りしてるかな?
5.Objects changes.
「By the way,一つ聞いていいかな??」
「本を読んでいます。今」
見てわからないものか? あと、なぜ英語?
「それはわかるんだけど、逆さま、だよ?」
…………………
「なんですか?」
「あの、その……私のこと、どう、思う?」
うわぁ。
面倒くさい。
「君は私のこと、どう思ってる?」
「先輩です、芒月小梅。それ以下でもそれ以上でもないです。」
SUSUDUKI、って言い難い。
「生徒会書記で成績優秀、生徒会長以上の支持率を誇る『氷の王女』、生徒会の影の支配者にして、現生徒会の高支持率の原因。そのせいで会長はジリ貧気味かつ傀儡呼ばわり。でも実はかなりのドジっ子で、二重人格。そんな感じの認識です」
「人格は一人だよ……うぅ……」
そんな格好しないで下さい。ウルウルもしないで下さい。写メって回しますよ。
「じ、じゃあ、どう想ってる?」
漢字って大事だね。それぞれに意味がある。
「……めんどくさい」
めんどくせー。
6.Don't bully me.
「ひどいよ、意地悪だよ」
「僕は嘘をつけないので」
本音です。
「公約掲げて生徒会長になったの、肴菜君だよ?」
貴女が辞退したから繰り上げ当選したんですよ、有効得票数の九割以上貴女の票だし。
あれ、今それ関係なくない?
「嘘はダメなんだよ?」
だから本音だって。
「嘘は、ダメなんだよ?」
本当に心から本音です。
「ダメなんだよ?」
えっと、怖くないですからね。
てーか、貴女のCoolっぷりこそウソでしょうに。
そのギャップはこの部屋限定ってのもキツイ。
ギャップ萌え独占ですか……
「嘘だよ、ね?」
あーもーはいはい嘘ですよ。小梅たん萌えー。可愛い可愛いチョー可愛い。
世界で一番可愛いよ。
ソンナニオレヲイジメナイデクダサイ。
7.Cool beauty.
「まったく、君は身持ちが堅いな。いや、それが悪いわけじゃないんだが」
そしてクールな、いきなりいつもの彼女。
完全無欠のクールビューティー。
「何ですか、いきなり」
「ギャップ萌え、とか感じない、かな?」
「いえ、まったく」
「おや、そうなのかい? 男子なのに淡白だね」
かんらかんら、彼女は笑う。しかし、いつもの彼女はまるで「大人」だ。
「……それともやはり、色気より食い気かな?」
ああ、もう、首をかしげないでください。ふくみ笑みを浮かべないでください。加えて腕を組まないでください。
「ああでも、色気がよかったら言ってね?その時は……えと、見せて、欲しい?」
そう言って。
平均よりも短めのスカートの先をちょいっと摘まんで、あげて見せた。
ぎりぎり見えない程度の、ほんの少しだけ。
ニーソックスの太もも。その、プクッと膨らんだ所。
肌色と、それが仄かに透ける黒。
「れ、れも、えっちなのは行けないと思う、よ?」
興味ない。
とは言わないけれど、顔真っ赤にしてまでたくし上げかけないでください。てか噛むなよ。余計に赤いんですけど。
だあああ、だからいいから降ろせっての!!!
芒月小梅は、見ての通りの美少女で。
スタイルもいい。好みかどうかは明言しないけれど。
その分、高嶺の花。性格もキツめで、友だちが少ない。
はず。
菊盃肴菜は、見た目こそ普通。だと思う。
染めそこねた髪に、表情の薄い顔。
素行は不良……だと思われている、らしい。
そんな二人の放課後。




