暗殺執事とリボンゴム
【作者より】
・今や幻となった来栖さんの長髪描写……(現在は短髪になっています)
・『悪食令嬢と暗殺執事シリーズ』では極めて珍しい残酷描写なし
ある日の朝、富永家の執事である来栖 直は自室で身支度を整えていた。
髪を束ねようとリボンゴムを口に加え、櫛を取った時、扉を叩く音が耳に入る。
「来栖さーん!」
使用人が彼の部屋の前にいる。
来栖は慌てて、口に加えていたリボンゴムを右手首につけた。
「はい。朝からどうされました?」
「ちょっとお話がございまして――」
このやり取りは彼と使用人による朝の日常会話。
今の彼は燕尾服は着用しているが、髪はおろしたままで伊達メガネをかけていない目つきが少し悪い美男子の姿であり、最悪な場合は寝起きの顔でパジャマ姿で対応することもある。
よって、この日の来栖はまだマシな方なのだ。
「あれ?」
「どうかしましたか?」
「確か……来栖さんはリボンゴムを使っているんですよね」
使用人は来栖の右手首につけられたリボンゴムに気がついた。
「ええ。よくご存知で」
「いつだか忘れてしまいましたが、髪をほどくところを見たことがあったので……来栖さんって意外と髪が長いんですね」
彼は黒髪で肩を通り越して肩甲骨くらいの髪の長さ。
髪が肩についてしまったら、短くカットするか耳より低い位置で結うか――
それが一般的な執事の髪型である。
「ええ。お恥ずかしいところを見られていたのですね……本来はリボンの方が良いのですが、どうしても私の性に合わないもので……女性ものですが、リボンゴムは便利ですよ」
来栖が富永家の執事として雇われた時にリボンを数本渡されたが、ある事情があるため、どうしても性に合わなかった。
今では全くリボンを使用せず、机の引き出しの中にきれいな状態で管理している。
その代わりに女性が使用しているリボンゴムを愛用しているのだ。
彼の手首につけられたものは黒いゴムに黒のリボンがついている。
決して派手なものではなく、シンプルなものだった。
「なんか来栖さんが使っていると女性ものとは感じないんですよね」
「それは何故でしょう?」
「うーん……なんて言ったらいいんだろうな……なんかシンプルで品位があるような感じがするんです!」
「品位がある……わ、私に対する褒め言葉でしょうか?」
来栖が苦笑しながら使用人に問う。
使用人は口をパクパクと動かし、「い、いや!」否定した。
「く、来栖さん! ち、違うんです!」
「はい?」
「もう! 笑わないでください! い、今の来栖さんは身支度中で申し訳ないですが、普段見ないお姿……なんというか……意外な雰囲気なので……」
「よく言われますよ。私も髪をおろしている時は雰囲気が変わると言われることが多いので……」
「では、来栖さん」
「なんでしょう?」
「このお姿で今日の執務をこなしましょう!」
「いえ、結構です。お嬢様や旦那様に確実に怒られますので、拒否させていただきます! では失礼いたします!」
バタンと部屋の扉が閉じられ、彼は支度に戻る。
残された使用人は不満そうにその場をあとにした。
最後までご覧いただきありがとうございました。
『悪食令嬢と暗殺執事シリーズ (https://ncode.syosetu.com/s4927j/)』の『月下の殺戮者(https://ncode.syosetu.com/n6303la/)』という作品に現在の髪型のファンアートを掲載しています。
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2026/01/03 本投稿




