第3章32話:髪の色
<セレナ視点>
街から家に帰る。
それから2日後。
朝。
井戸の水で顔を洗い、リビングに戻ってきたとき。
「おいセレナ」
とクレアベルが言ってきた。
「お前、髪がおかしいぞ」
「え?」
「毛先の色が変わってる。鏡を見てみろ」
そういわれたので、私はリビングの鏡の前に立つ。
「ほんとだ……なにこれ?」
自身に起こった異変を自覚する。
前世でも異世界でも私の髪は黒色だ。
ところが、なぜか鏡に映る自分の毛先が、茶色みがかっている。
気のせい……ではない。
明らかに、髪の先端部分の色が違っている。
具体的にいえば、髪の頭頂部から半ほどにかけてが黒色。
そこから下はグラデーションを描きながら茶色に変わっていた。
「うーん?」
原因不明だ。
病気か?
でも、特に体調が悪くなったりはしてない。
「まあいっか」
と大して気にも留めないことにした。
だが、1日後。
私の髪の色は、さらに茶色みがかった。
髪の中ほどまでだった茶色が、てっぺんに向かってどんどん広がる。
そして2日後。
いよいよ、私の髪は完全な茶髪へと変貌した。
毛先だけだった茶色が、頭頂部まで広がって、髪全体を覆い尽くしたのだ。
この深みのある茶色――――
私は心当たりがある。
(チョ、チョコレートだ……)
そう、チョコレート色である。
どういうわけかチョコレートの茶色が、髪に反映されてしまったようだ。
(うーん、なんでだろ?)
どうしてこんなことが起こったのか?
まったく見当もつかない。
とりあえずクレアベルに聞いてみることにした。
すると、
「そうだなぁ……自分の魔法や魔力が、身体や体質に影響を与えることは、なくはない」
とのことだ。
つまりチョコレート魔法が、髪の色に影響を与えたという推理。
まあ、私もそんなところだろうと思うけど。
クレアベルは逆に聞き返してくる。
「髪が心配か?」
「うーん」
私は口元に手をあてて答えた。
「まあ、体調不良が起こってるわけでもないですし、別にいいかなとは思ってます」
「そうか」
別にチョコレートのにおいがするとか、甘い味がするわけではない。
ただ色が変わっただけだ。
だから、深刻になるような話ではないと思った。




