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第1章3話:猫


夏が過ぎて、秋になった。


山の秋は、ほんとうに美しい。


樹木が紅葉や黄葉に色づいて、情趣(じょうしゅ)にあふれた景色が広がる。





――――ある日のこと。


昼。


いつものように、私は寝室に寝かされていたのだが……


寝室の開け放った窓から、忍び込んできた猫がいた。


猫はニャーニャーと鳴きながら、ベッドに飛び乗って……


なんと、私を肉球(にくきゅう)で殴り始めた。


肉球は可愛いんだけど、痛い。


こんにゃろう、猫のくせに……!


と思った私は、チョコレート魔法を使って猫を追い出すことにした。


まず、チョコレートをヒジ辺りから伸ばすイメージをする。


すると、にょきっ、と右腕のヒジからチョコレートが生えてきた。


その生えてきたチョコレートを、伸ばして、伸ばして、伸ばして……


ロープのような長さまで伸ばし……


ゆっくりと狙いを定め……


サッと猫に巻きつけた!


「ニャー!? ニャニャ、ニャー!!」


と、猫がビビり散らしていたが、もう動けない。


チョコレート・ロープに捕縛された猫を、私はぐいっと宙へ持ち上げる。


ふははは、見たか!


これがチョコレート魔法だ!


さて、あとは窓の外へ帰すだけだ。


二度と戻ってこないように、猫を追い出したあとは、部屋の窓もチョコレート魔法で閉めておくか。


と、そのときだった。


「おい。なんか猫の声がしたが、―――――!?」


クレアベルが、部屋に入ってきた。


空中に浮かぶ猫。


私の腕から生えたチョコレート。


そう。


このときはじめて、クレアベルにチョコレート魔法を見られてしまった。


「な、なんだ!?!? 茶色い糸が、伸びて、ええ!?」


と、クレアベルがめちゃくちゃ困惑していた。


このとき私も動揺して、チョコレート・ロープの束縛をゆるめてしまった。


猫がすかさず、ロープから逃れ……


そのまま窓から脱出する。


あとには私と、混乱したクレアベルが残った。


ややあって、クレアベルは状況を理解したらしく、以下のように言った。


「なるほど。セレナ……お前、もう魔法が使えるのか」


驚きを含んだ様子でクレアベルが続ける。


「ははは、すごい子だ。将来立派な魔法使いになるぞ」


そう言って、クレアベルが頭を撫でてきた。


相変わらず言語が不明なので、何を言っているのかよくわからなかったが……


たぶん褒められたのだろう、と私は理解した。










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