間取り
「牛乳のせいで…」
スーパーでいつもより10円安かった牛乳。思わず2本買ってしまったのだ。
指に食い込むエコバッグに怒りを感じながら、商店街を歩く。
お世話になっている不動産屋の前。ふと、店のガラスに映る自分の姿を見れば祖母の面影…
「やだ、ばあちゃん、まだ早いって…」
自分のヨレ具合にショックを受ける琴美。
「見て!このマンションの4階と10階の部屋、間取りは同じなのに家賃が全然違う!」
「え?どれ?……本当だ…間取りは同じなのにね」
「どこが違うんだろう?」
「景色とかじゃない?」
「ああ、なるほど!」
帰路に着く女子高生が、冷やかしで見ていた不動産屋情報。そこに貼られたマンションの4階と10階の部屋。間取りは同じだが、家賃に三万円の差があった。
まあ、厳密に見れば間取りも違うと思うけれど。
……
「確かに景色は重要ね。でも、1階と10階では「柱の太さ」が違うのよ」
「柱の…太さ?」
「ええ。例えば、地下駐車場にある太い柱。上に乗る建物を支えるのにあれくらいの太さが必要なの。でも、上階にはあの太さはいらないでしょう?柱は上に行けば行くほど細く作られているの。柱の数も少なくなるわね。だから上階の部屋は広くなるのでその分値段が高いのよ」
「さすが琴美さん!なんでも知ってますね」
「ええ。知ってる事なら何でも知っているわ。恋の話以外はね❤︎」
「素敵です〜」
………と、脳内で女子高生に大したことない情報を教えてあげる琴美であった。
ちなみに女子高生は、とっくにその場にいない。