青春
「うわー…いつのまにかこんな時間!午後から雨だっちゅーのに!」
すでに午後である。
さっきまで「押入れ収納を収納するため押入れを片付ける」という回文のような状況になっていた。
押入れから次々と出てくる懐かしい物たち。一つ一つを愛でる事でどんどん時間を奪われて、気づけばこんな時間。
急いで身支度を開始する。
長い髪の毛はくるくるとねじってヘアクリップで留めていたので、クリップを外せばなんちゃってゆるふわヘアーである。
日焼け止めのBBクリーム、パウダー。眉を描いて軽くアイシャドウを塗る。ローズ色のグロスを塗れば完成。
と思ったが、一応アイラインも描く。これでなんとか顔の「雰囲気」だけは作れた。
ストンとしたロングのTシャツワンピースにキャップをかぶれば完了。
青ひとつない曇天の空の下。駅前の商店街を歩けば、女子高生たちがワイワイとはしゃぎながら通り過ぎて行く。
「彼氏が〜…」
「ああ、イケメンの?」
「そそ…今度…」「「きゃーーー❤︎」」
イケメンの彼氏の話で盛り上がって楽しそう。
「懐かしいなぁ…」
琴美は彼女たちの青春と自分の青春を重ねる。
「昔の私も彼氏の話で盛り上がる人たちを眺めてたなぁ…」
十数年前から何も変わっていない琴美であった。