噂の私
「おはようございます」
「ねえ、椎名さん知ってる?」
今日から通常運転の職場にて、怖い噂を耳にした。
どうやら、夜行性の動物?か何かが琴美の職場の上のフロアに住み着いているらしい。
この繁忙期中、皆が遅くまで仕事をしていたのだが、22時を過ぎた頃、上のフロアから「ぐぇぇ」とか「ぐゎぁ」とか動物の鳴く声がしたのを、何人かが聞いたという。
苦しそうに動物が鳴いていると言われていたが
「ねぇ、それって幽霊じゃない?」
誰かがそう言い出した事で、幽霊か動物かと噂が立った。
「椎名さんは何か見たり聞いたりした?」
同僚にそう振られた琴美。
「残業中、よく22時過ぎに上のフロアに行ったりしましたが…気がつきませんでしたよ?」
「え?その時間にどうして上のフロアに行ったの?」
「ずっと座りっぱなしで腰にきてたのと、気分転換に伸びをしたくて。でも、この前は皆さん忙しそうだったので、邪魔にならないよう上のフロアでやっていたんです」
「…どうやって?」
「え〜っと、こうして…」
頭上で手を合わせ、体を前後左右に振る琴美。
つい声が出る。
「ぐえぇぇ…」
「ぐわぁはあ…」
同僚たちは困ったように顔を見合わせた。
そこに4月に入ったばかりの後輩くんがやってきて空気読まない一言。
「え?じゃあ動物の鳴き声かと思ってたのって椎名さんの声だったんですか?」
凍りつく同僚に対して琴美のアンサー
「え?私、動物っぽい声出てた?やだ〜。これから気をつけよ」
この素直さに皆が救われている事を琴美は知らない。
こちらのお題は『雨澤 穀稼』サマからいただきました。
雨澤さまの作品『はあ……無料ポイントで交換したチケットをなくす……【WEB】』N1778KU
お時間ありましたら遊びに行ってみてくださいね