抱き枕
先日、押し入れを片付けた時に出てきたものがある。
かなり数年前、コンビニのクジで引き当てた抱き枕カバー。
何かのキャラクターらしい水着姿の女の子が、恥じらうようなポーズをしながらも「それは尻か?」というような胸を見せつけている。
恥ずかしそうにしながらも、つけている水着の面積はカスほどだ。
紐に金を払っているような水着を着ていたらそりゃあ恥ずかしいだろう。
「でも案外お高いのよね」
布の面積が少ないほど、下着の値段は高かったりすると琴美は知っている。
「あ…いい事思いついたわ」
しまいそびれていた羽毛掛け布団を、これの中に仕舞うのはどうだろう。
カバーの大きさに合わせ、くるくると羽毛布団を畳む。
女の子の足元にあるジッパーを開け、そこから布団を押し込むとちょうど良い具合に布団が収まった。素敵な抱き枕の完成。
よいしょと押し入れの奥に仕舞ってみる。
「いい感じじゃない」
収まるところに収まったなと満足して押し入れの扉を閉めようとした時、手前にあるコートの隙間から覗くキャラクターと目が合った。
「こわ〜い…」
そそくさと布団を取り出して、カバーも仕舞う。
カバーは元通りだし、羽毛掛け布団も仕舞っていない。
何も変わっていないのになんだか疲れた。
「お茶しよ」
実はこのキャラクターの抱き枕カバー。
ファンの間でプレミア価格で取引されている事を、琴美は知らない。
こちらは『yusanari』サマのお題になります。
yusanariサマの作品『甘落の雁〜和菓子の架け橋〜』N5502IN
お時間ありましたら遊びに行ってみてくださいね