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「カラフィアート様、あの方どう思います? 」
挨拶を交わして以降コーネリアは社交性の無い私に頻繁に声を掛ける。
まだ名前を呼ぶような関係ではないが、爵位から様となり少しずつ距離を縮められている……のではないかと思っている。
「あの方とは? 」
「あの平民です」
令嬢に促された先には、最近王子と親し気に話す女生徒の姿があった。
貴族の中には平民に対し目に余る対応をする者もいるが、コーネリアの場合は平民を拒絶している。
「学園には貴族だけでなく優秀な平民も通っているわ」
「そうではなく、アルドロヴァンディ王子と親密過ぎではありませんか? 」
「親密かしら? 学園で交友関係を広めるのは、正しいのではありませんか? 」
「王子と平民では不釣り合いです」
「そうかしら? 」
「忠告するべきです」
「私は二人の関係について苦言を呈する立場には無いわ」
「自身の立場を教えるのも貴族の務めです」
「そうなの? 貴方は貴族の鑑ね。その役目は貴方に任せるわ」
「カラフィアート様がなさるべきです」
「私が? どうして? 」
「アルドロヴァンディ王子の婚約者有力候補と言われているからです」
「私が有力候補かどうかは分かりませんが、私は王子の婚約者の座を欲した事はありません」
「そう……なのですか? だとしても、私が侯爵令嬢を差し置いて王子と親密にされている方に忠告するわけにはいきません」
「忠告するのに立場なんて関係ありませんよ。貴方はあの方を思って行動するんですもの素敵な事よ」
「私は……カラフィアート様は、あの平民の事をどう思っていらっしゃいますか? 」
「彼女の事ですか? とても優秀な方、という認識かしら」
「他には? 」
「他にですか? あの方とはなんの接点もないので、それ以上はもっと親しい方に尋ねた方がよろしいかと」
「……王子とあんな親し気にされているんですよ? 不快には感じないのですか? 」
「王子の交友関係だもの。私は何も思いませんわ」
「……そうなのですね」
その後、平民に注意する貴族令嬢の姿を発見。
「貴方、アルドロヴァンディ王子の優しさを勘違いなさっているのではなくて? 貴方は平民なのだから立場を弁えなさい」
平民の彼女を取り囲む令嬢達。
人通りは少ないとはいえ、中庭で忠告していたので偶然目撃した。
状況を確認していると、令嬢達の中にコーネリアの姿は無い。
「コーネリア様以外にも彼女を思って忠告なさる方がいるのね」
他人を思っての忠告なんて面倒な事を、わざわざする優しい人に感心していた。
私は気が付かなかったが、コーネリアもその光景を目撃していた。