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面と向かって『友人になりたくない』発言には驚くも、私はそれでいいと思う。
嫌いなら無理に親しくする必要はない。
それが私の考え。
子供なのだから、いずれ時間が解決することなのかもしれない。
だけど、私は今日の事を忘れない。
何故なら私の前世が関係している。
そう、私には前世の記憶がある。
〈私の前世〉
「あいつ、本当にうっとおしいよね」
「本当。大して優秀でもないのに偉そうに」
「目障り」
「正義感ぶって……」
「さっきのも何? 友達なら味方するでしょ? 」
「絶対うちらの事見下してるよね」
彼女達の会話からして、内容の相手は私の事だとわかる。
先程クラスの決め事に私が彼女達ではなく、別の人の意見に賛同してしまったからだ。
以前から彼女達の決め方は強引過ぎて、反対意見を言わせないところがある。
友達だから、私は反対意見を述べた……見下してなんかない。
「本当ムカつく」
「なんなのアイツ……」
それが友人だと思っていた人達からの私への評価だった。
私が彼女達のグループに属するようになったのも、以前仲良くしていた子達が些細な事が気に入らないと言った子に酷い態度をしていたのを注意した事が切っ掛け。
そんな事で友人関係が終わるとは思っていなかったが、私は遠ざけられた。
そして私と入れ替わるように庇った子が元友達であった子達と仲良くし始める。
「だからどこからもハブられるんだよ」
その場からすぐに立ち去ればいいのに、足が動いてくれない。
偶然忘れ物を取りに教室に戻り、仲の良い皆の姿を見つけた。
普段のように声を掛けようとしていた時、思いがけない会話を聞いてしまう。
いつも一緒にいて、仲良しだと思っていたのに……
「自分が嫌われてるの、いい加減気づけよって感じだよ」
あの日から私は彼女達のグループを抜けた……外された。
あからさまに悪評を囁かれ、クラス全員から煙たがられるように。
あの日の言葉は忘れられず、高校に入学してからもその言葉が離れなかった。
「ねぇ、貴方さっきから黙ってるわよね? 意見は? ないの? 」
「私は……」
周囲に気を使って自身を殺し言葉を考えるようになったら、今度は喋られなくなってしまった。
「もういいわっ。後で文句言わないでね」
高校でも私は孤立してしまった。
あの件で私は遠くの大学を受験した。
なので、この学校にあの頃の私を知る人はいない。
いないのに、私は過去に囚われたまま……
「そこの子っ……危ないっ……」
カシャーン……カシャーン……カン……カン……
上を見上げると空から何かが降ってくる……
「えっ? 」
昨日の台風でビルの足場が傾き鉄パイプが崩れたよう。
誰かの声でその事に気が付いたが、気付いた時には既に目の前に迫っていた。
「……ぅっ……」
空を見上げていたはずなのに、真っ暗。
温かい液体が涙のように伝っていく。
暗闇が私を睡魔に誘う。
その欲望に逆らうことなく私は眠りについた。




