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「俺との婚約を考えてもらえないだろうか? 」 


 婚約・婚約解消・破棄宣言は卒業パーティーの名物といえる。

 今年も例外になく行われた。


「アルドロヴァンディ王子、エミーリア様との婚約おめでとうございます……お二人の幸せを遠くから願っております」


 第一王子の婚約を祝う私は侯爵令嬢。

 貴族社会では、私が王子の婚約者有力候補と囁かれていた。

 婚約について王族からの打診も無ければ、我が家からも王族に提案したこともない。

 爵位や年齢、家門の経歴など様々な事を考慮し各々が勝手に推測したに過ぎない。

 その噂を覆すように、私から王子に婚約祝いの言葉を贈る。

 これからそうなるまでの経緯を語ろうと思う。


ーーーーーーー



「オフェリア、お友達のお茶会に招待されたの。貴方も一緒に行きましょう? 」


 朝食の席で母から誘われ相手の屋敷に向かう。

 準備を整え馬車の中で相手の事を知る。


「今日招待されたのはリンドフスキー侯爵家よ」


「リンドフスキー侯爵家? 」


「そう。それで、あちらにも貴方と同じ年齢の男の子がいるの。ご挨拶出来る? 」


「……はい」


 私は八歳になり初めてお茶会に参加する。

 そのこともあり母は私が粗相をするのではないかと、とても心配している。


「到着しました」


 馬車が停車し、御者の合図を受ける。


「さぁ、行きましょう」


 初めて訪れた我が家とは違う屋敷。


「お待ちしておりました、カラフィアート侯爵夫人にカラフィアート侯爵令嬢。会場まで私が案内させていただきます」


 母と手を繋ぎ、到着を待っていた執事に会場に案内される。

 本日のお茶会の会場は庭園。

 侯爵家の庭園はバラが咲き誇り、自然と目を奪われた。


「オフェリア、ちゃんと前を向いて歩いて」


「はい」


 お茶会が始まる前に転んで今日と言う日を台無しにするわけにはいかない。

 母は今日のお茶会を楽しみにしていた。

 大人しく座り主催者を待つ。


「お待たせマティルダ」


「ハンナマリ、本日は招待してくれてありがとう」


「貴方がオフェリア様ね」


「本日はご招待頂きありがとうございます。オフェリア・カラフィアートと申します」


「ハンナマリ・リンドフスキーよ。オフィリア様、本日はようこそ。紹介するわね、私の息子よ。オフェリア様と同じ年なの。さぁ挨拶して」


「ベルナルト・リンドフスキーです」


 全員の自己紹介を終え、席に着きお茶会が始まる。

 母親二人の会話を聞きながら先程紹介されたベルナルトを見た。


「オフェリア様は花は好きかしら? 」


「はい」


「そう、我が家の庭は自慢なのよ。ベルナルト、オフェリア様を案内してあげて」


「はい……どうぞ」


 大人の会話は退屈だったので、庭の散策は有り難い。

 

「……足元には気を付けて……」


 母親に言われ私を案内している姿は素直だが、会話は無い。

 バラを眺めていると、彼は無言で歩調を合わせてくれる。

 彼の後ろ姿をゆっくり付いて行き、庭の散策を終え先程の会場へ戻る。


「お帰りなさい、二人共。オフェリア、庭はどうだった? 」


「とても美しいバラでした。ありがとうございます、リンドフスキー侯爵夫人」


「いえ、楽しんでもらえてよかったわ。ベルナルトはオフェリア様をちゃんと案内できたかしら?」


「はい、庭を案内しました」


「オフェリア様とはどう? 友人になれそう?」


「僕は令嬢と友人になるつもりはありません」


「ベルナルトッ……それは、どうして?」


 ベルナルトの予期せぬ言葉にリンドフスキー夫人は困惑。

 私としても庭を案内されている時、彼とは無言だったけど互いに悪印象ではなかったと感じていた。


「僕は令嬢と友人になりたくありません」


 彼ははっきりと宣言した。

 夫人が何かあった訳を尋ねるも彼が理由を口にすることは無かった。


「オフェリア様、ごめんなさいね」


「いえ。あそこまで私を嫌ったのですから、私が彼の気に障るような態度をしてしまったんだと思います」


 私の何が原因だったのか分からないが、ベルナルトは私を嫌った。

 その後、母は夫人と友人関係もあり許していた。


「時間が解決するわ」


 何が原因だったのか分からないので、互いの母親は子供の些細な行き違いと判断し母は彼を許した。

 私は……彼を……許す? いや……許す許さないなどではなく、彼を嫌うことにする。

 彼が私を嫌うなら、誤解を解いて友人関係を築くつもりは無い。


「嫌うなら、嫌えばいい」


 それが私達の初対面。

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