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初夜のベッドに花を撒く係、魔族の偽装花嫁になる  作者: 棚本いこま
第二部 楽しい魔王一家

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◆69.騒動は日常


「今日は色々あったなあ……」


 夜。

 お風呂を済ませて寝間着(注:普通の寝間着)に着替えた私は、力尽きてベッドに倒れ込んだ。むやみに広いベッドの真ん中にたどり着くだけの気力はなかったが、端の方でも充分に寝心地はいい。


 くたくたの身体をふかふかのベッドに沈ませながら、盛りだくさんだった一日を振り返る。


 芋掘り徹夜明けの朝を迎え、多数の新作寝間着をお披露目され。


 耐火性メイド服で火の海に飛び込み、料理長と仲良くなって危険物もとい保温器具をもらい。


 魔王一家長女のビオレチアさんと出会い、ニャン宅のエドナーさん・ラナさんとも出会い、懐かしい腕輪も出てきて。


 アイザック博士の実験を終えて再びベルドラドを膝枕していたら、ケルベロスたちが泣きながら部屋に飛び込んできて、お互いの毛量について喧嘩したのだという不毛な争いをベルドラドが「これやるから仲良くしろ」と首輪を投げてよこして解決し、仲良く首輪を投げ合いっこしながら去るケルベロスを見送って、これで平和になったと思ったら今度は配布用ポテチを手にした料理長がやってきて、私がポテチの味を褒めたらベルドラドが対抗意識を燃やしてしまい料理対決を宣言、料理長が受諾してしまったのでテイジーさんに決闘の申請書を出しに行くことになり、恙なく却下されて事なきを得て、約束通り夕焼け足湯デートしてロマンチックな雰囲気になったりならなかったり、これで平和に一日を終えられると思ったら今度はビオレチアさんが飛び込んできて、お土産のお披露目大会が始まり……。


「いや一日が長い」


 一日にイベントを詰め込み過ぎである。日にち分けろと言いたい。


……そういえば、ベルドラドの花嫁になる直前、王宮メイドとして新婚夫婦の初夜のベッドの準備をしていた時にも、同じことを思ったっけ。


 あの時は王族の結婚式の詰め詰めな内容に対して抱いた感想を、今は自分の、それも何の式典があるわけでもない普通の一日に対して抱くとは……。

 魔界に来てまだ半年くらいしか経っていないのに、普通のメイドだった頃が、遥か遠い昔のようである。


「どうしたリシェル。遠い目をして」


「一日どころか、ちょっと人生を振り返っていました……」


 声を掛けられて顔を上げると、もう寝る時間だというのにベルドラドは寝間着ではなく、見慣れない服を着ていた。東方大陸の衣装、いわゆるカンフウ服である。


「あ。ビオレチアさんのお土産、さっそく着てみたんですね。よくお似合いです」


 私の感想に、ベルドラドはドヤ顔で胸を張って尻尾をぱたぱたと振った。お世辞ではなく文句なしに似合う。似合うのだけれど、なぜスコップを背負っているのかがとても気になる。


「これ動きやすそうだから、作業するのに丁度いいと思って着てみたんだ」


「作業?」


「ちょっと今から宝石の採掘に行ってくる」


「芋掘り以上に就寝前にする作業ではない」


 これだけ一日に色々あったのに、まだ何かする元気があるとは。ベルドラドの人並み外れた気力と体力に脱帽である。いや人並み外れたというか、正しく人外なのだけれど。


「どうしたリシェル。また遠い目をして」


「いえ、私もおでこが光ったり寿命が延びたり、まあまあ人間離れしたかなと思っていましたが、まだまだ本職には敵わないなって……」


 元気なのは良いけどさすがに採掘作業は別の日にしてもいいんじゃないかなと思いつつ、本人がやる気満々の様子なので、引き留めるのはやめておいた。


「ちなみに採掘する宝石というのは」


「もちろんリシェルの首飾り用の宝石」


「あれ本気だったんですか」


「俺はいつだってリシェルに本気だぞ」


 ベルドラドは相変わらず息をするように愛を囁くと、くたくたと伸びていた私をころころと転がして広いベッドの中央に配置し、丁寧に毛布を被せて、優しく髪を手で梳いた。今日のように私がベッドの端の方で力尽きていたら、彼は三回に二回はこの工程を実施してくれる。なお三回に一回は襲われる。


「じゃあ、いってきます」


「はい、いってらっしゃい」


 いってらっしゃいのキスとおやすみなさいのキス、どちらに分類すべきか悩ましいキスをして、カンフウ服にスコップを背負って窓から夜空へ飛び立つ夫を見送った。


 ゆるゆると降りてきた眠気に任せて目を閉じて、人生の振り返りの続きをする。


 普通のメイドとして働いていた頃は、良くも悪くも同じことの繰り返しで、毎日とても平穏だった。


 対して今日。目覚めから就寝に至るまで、騒動の連続である。

 否、今日に限らない。驚くべきことに、ベルドラドの花嫁として魔王城に来て以来、毎日がこんな感じなのだ。


「ふふ……」


 そしてこの騒がしい日々は、けっこう楽しかったりするのだ。

 溜め息の代わりに、笑みが零れてしまうくらいには。


 明日も今日みたいに騒々しいんだろうなと笑う私は、まさかこれ以上に濃い一日が――誘拐されて魔界の端っこで命の危機に瀕する事態が――近いうちに待ち受けていることなど想像もせずに、眠りについた。



 以上、「騒動は日常」編でした。

 リシェルの苦労はまだ続く。


 そしてすみません、一旦ここで休載を挟みます……。

 色々立て込んでいて再開が未定なのですが、一つの首輪をフリスビーよろしく投げ合ってキャッキャしているケルベロスなどを想像しつつ、ごゆるりとお待ちいただければ幸いです……!


 お待ちの間にと言ってはなんですが、別件で連載を始めました。

『翻訳破棄 ~魔王の婚約者になったら言葉が通じなかった~ 』です。


 こっちはこっちで魔王城ラブコメ、

 魔王(善人)×姫(ええ性格)でございます。

 ぜひ覗いてみてね! 半年くらいで完結予定です!


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『初夜のベッドに花を撒く係~』
書籍版の情報は
角川ビーンズ文庫公式サイトで!

短編版の読み切り コミカライズもぜひ!
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― 新着の感想 ―
なるほど。物語に1度魔封じの腕輪を嵌めさせて、魔力(おもしろさ)を高める算段ですか。初夜ベッドジャンボジェット号の再テイクオフ、ゆるりと待っておきます。 にしても、1日の密度が波乱万丈。ナレーション…
一日が…………長いっ! これだけのイベントが一日に圧縮されている超濃密な日常(・_・;) リシェルがバタンキューしてしまうのも仕方ない。 そう考えるとベルドラドは本当にタフだなあ。 お休み前の採掘∑(…
第二部が全部1日のうちの出来事だったことにホントびっくり。思わずオールナイト芋掘りから読み返してしまいました。 リシェル、いい夢見ろよ!(byトレイシア) 第三部の予告が不穏ですが、ポテチ食べながらゆ…
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