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ショートショートの小宇宙

人類の歴史

作者: 駿平堂

「はい、今日は博物館での校外学習になります。まずは人類の進化と歴史についてです」

 とある博物館で、小学生の校外学習が行われていた。展示されているこれまでの人類の復元モデルを順番に解説していく内容だ。

「まずは、こちら。初期猿人ですね。見てもらうとわかるように、既に二足歩行が可能でしたが、見た目はまだ人類というよりは、チンパンジーに近いですね」

 これが自分の祖先だなんて信じられない、という表情をしながらも、生徒たちはみな、そこにいる復元モデルの姿に興味津々だった。

 そしてその後、猿人、原人、旧人という具合に数体の復元モデルを説明し終えたところで、先生が子どもたちに問いかけた。

「次は私たち現生人類の一段階前である旧人類についてですが、せっかくなので、先生が説明をする前に、みんなが感じたことを聞いてみようかな。何でもいいので、この復元モデルを見て感じたことを発表してくれる人?」

「ぼくたちの姿に近づいてはいるけど、やっぱりまだ少し違います」

「お、特にどんなところが違いますか?」

「うーん。頭が少し小さくて、体はがっしりしていて、まだちょっと野蛮な感じがする」

「そうですね。この頃になると、知能もかなり発達していて、高度な文明社会を営んでいましたが、脳の大きさはまだ私たちの三分の二くらいだったと言われています。ちなみに個体数は、ピーク時は百億人が生息していたとも推計されています。現在の人類の人口は何人だったか覚えていますか?」

「約一億人」

「よく覚えていますね。正解です。実に百分の一まで減少した、ということになります。それは、歴史の授業でも教えましたが、旧人類たちによる核兵器を使用した戦争や環境破壊の影響が現在まで続いているからです」

 複雑な顔で復元モデルを見つめる生徒たちに気づいた先生は、さらに言葉を足した。

「過去はどうしようもないので、未来の人類のために私たちに何ができるか、ということが大事ですね。さて、時間もきりがいいので、人類の進化と歴史はここまでにします。少し休憩にして、次は宇宙進出の歴史についてです。それでは、ありがとうございました。あ、復元モデルさんたちにもお礼をしておきましょうか。せーの、ありがとうございました」

 先生の掛け声で生徒たちがぺこりとお辞儀をすると、それまで興味深そうに生徒たちを見つめるだけだった復元モデルたちは、不可解そうにしながらもぺこりとお辞儀を返した。

 そうしてクラスが解散した後、一人の生徒が、すぐ横に掲示されている展示パネルについて質問をした。

「先生、これは何が説明してあるの?」

「ああ、これは化石から遺伝子を抽出して、ここにいるような復元モデルたちを作成する方法を説明しているんだけど、みんなにはまだちょっと難しいかなー」

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