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なみだの決戦日  作者: 成城諄亮
第1章
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第二章 第23話

 目が覚めたのは十七時過ぎだった。変なタイミングで寝てしまった。ベッドの上で伸びをしていると、ふと脳裏に咲佑の姿がよぎる。そういえば、咲佑が来てたんだ。


リビングは電気が消されていた。開いたままの遮光カーテンの向こうから、夕日が顔を覗かせている。でも、そこに咲佑はいなかった。テーブルの上にあったはずのコーヒーカップは、シンク横にある水切りラックに、折り重なるように並べられている。咲佑に申し訳ないことをしたと思いつつ、隠し事について話さずに済んだのはラッキーだと思えた。


「いらない服があったら俺にくれ」そう言われたのは昨日のことだった。それから俺はクローゼットの中で窮屈そうにしているシャツやアウターを引っ張り出した。あっという間にできあがった服の山。今はテッペンから雪崩を起こしている。咲佑が何を取っていったかすぐに分かった。まさかあのデザインを選ぶなんて。


 夕飯を作る前に咲佑に礼だけでも伝えておこうと、俺はスマホを手に電話をかけた。が、何コール鳴らしても電話に出ることはなかった。履歴が残るから、また連絡してくるだろう。礼を伝えるのはそのときでいいや。そんな安易な気持ちで夕食を作り始めたのだった。


 異変に気付いたのは、いい感じに味が染みたカレイをお気に入りの皿に盛りつけようとしたタイミングだった。そこにあるはずの皿が消えていた。他の食器が並んでいるところを見ても、冷蔵庫の中を見ても、どこにもなかった。


普段あまり汗をかかない俺だが、今は額に脂汗がじんわりと滲んでくる。暑いわけじゃないのに。何となく、悪い予感しかしなかった。


「まさか、泥棒・・・?」その考えが脳を支配していくと同時に、作りたての煮つけをフライパンに残したまま部屋中を歩き回って、何か盗まれたものはないかを探した。リビング、寝室、そして浴室まで。ただ部屋中どこを見ても、荒らされた痕跡はなかった。でも、確かにお皿はなくなっていた。あと、年代物の赤ワインも。


この家は咲佑が出て行ってから俺が起きるまでの数時間、玄関の鍵は開錠されたままだった。つまりは、誰でも入ることができた。「防犯対策はしっかりしておきなさい」家族から口酸っぱく言われ続けていたのに。今回のことは、完全に俺が気を緩めたために起きたこと。失格だ。


 スマホから警察に電話をかける。落ち着いた声の女性に、こう伝えた。


「自宅に強盗が入ったかもしれません。来ていただけますか?」

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