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なみだの決戦日  作者: 成城諄亮
第1章
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第二章 第22話

 自宅の扉を開けると、湿気が溜まった空気が一気に襲い掛かってきた。早急にエアコンを入れたかったが、それよりも先に来客用のスリッパを取り出す必要があった。


「凉樹、これ何?」


咲佑が指差した先にあったのは、つい一週間前に置いたばかりの金色のランプ。これは、たまたま仕事終わりに道端で会った奏さんに買ってもらったプレゼントだった。外国を思わせるデザインが気に入っている。


「仲良くさせてもらってる先輩から貰ったんだよ。外国のお土産だって」

「へぇー、お土産か」


そう呟いた咲佑は、そのランプに興味があるのか、あらゆる方向から眺めていた。下に隠してある値札タグを発見されたら終わり。嘘をついていることがばれないように、俺は平然を装う。


「何か問題でもあるのか?」

「何でもない」

「そ、そうか? ならいいけど」


一旦この場は乗り切ったという安心感と、まだこういうことが続くのかという不安感からか、鼓動は早くなっていく。


 咲佑は俺が出したボーダーのスリッパを履き、パタパタと音を立ててリビングに入って来る。咲佑が家によく来ていたあの当時が懐かしい。あの頃には、もう戻れそうにない。


「で、話って何だよ」


咲佑はラックに置いてあった雑誌を手に取る。表紙は、クールな表情の俺らNATUraleza四人が飾っている。そんな表紙を眺めたあと、ぱらぱらと捲っていく。


「それより、何か飲まないか? っていってもコーヒーか水しかないんだけど」


俺は今日、あのことについて話すつもりはない。ずっと隠し続けるつもりでいる。咲佑にばれるまでは。


「凉樹は何か飲むのか?」

「俺はコーヒー飲むつもりだけど」

「じゃあ、俺もコーヒー頼むよ」

「分かった。すぐ準備するから」

「ありがとな」


 コーヒーメーカーを稼働させている間、咲佑が話を聞いていようが、聞いてなかろうが気にせず、仕事の話をし続けた。話している途中で無心になっていたのだろうか。ハッとしたのは、咲佑の声がした瞬間だった。


「凉樹、コーヒーできたみたいだけど」


咲佑は機械を指差していた。俺は「悪い、気付かなかった」笑って誤魔化した。咲佑に話す隙を与えないようにするので一生懸命になり過ぎていた。


 熱々のコーヒーをコップに注ぎ、咲佑に手渡す。カップは当時咲佑がお気に入りで使っていた、淡いブルーのものを選んだ。


「ありがとな」

「おう」

「あ、このカップ―」


タイミング悪くかかってきた電話。相手は正木だった。今じゃなくてもいい。その思いでスマホをテーブルの上に伏せて置く。


「出なくていいのかよ」

「別に今じゃなくてもいい相手だし」

「ふーん」


自分のカップにコーヒーを注ぎながら着信音が切れるのを待ったが、執拗に音は鳴り続けた。


「出てくれば? それだけ鳴らすってことは緊急の内容かもよ?」

「あぁ、そうだな。ごめん」

「おう」


俺はスマホを握りしめ、リビングを出た。閉められた扉の向こうで、咲佑はどんな行動を取っているのかと考えるだけで、勝手に胸が騒ぎだしていた。


 電話を終えリビングに戻ると、咲佑はコーヒーを嗜んでいるところだった。


「電話誰からだったんだ?」

「まさっきぃ」

「おいっ、出なきゃいけない人じゃん」

「いいんだよ。俺がオフなこと知ってて電話かけてきたんだから」

「ふーん。まぁいいや」

「あーあ。せっかくのコーヒーがちょっと冷めたな」

「いいじゃんか別に。それに湯気まだ立ってるし」

「だな」


 咲佑が家に来てから五十分が経った。空になったコップを眺めていると、出し抜けに眠気に襲われた。


「咲佑、ごめん。三十分だけ寝てくる」

「分かった」

「服、その山から適当に取っていいから」

「助かるよ」


咲佑は鞄の中から紙袋を取り出している。そんな中で、俺はリビングすぐ横にある寝室の扉を開け、そのままベッドの上に倒れるようにして眠りについた。ここ最近の中で一番いい寝つきだった。

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