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なみだの決戦日  作者: 成城諄亮
第1章
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第三章 第21話

 いつからだろう。凉樹との間に溝が生まれたのは。曇ったままの心には、いつになっても陽が差さない。照らしてくれるのは凉樹という太陽だけだと思っていたのに、その太陽に裏切られるなんて。人生、一生曇ったままだ。


凉樹の肩関節から、乾いた音が聞こえるとともに、俺は現実の世界に戻った。俺の腕は彼を抱いたままの形状を維持していた。


「あ、ごめん。つい」

「あ、いや。べつに」


思い惑っている様子の凉樹。頬が火照っていく。


「あのさ、裏切ったってどういうこと?」

「・・・」

「俺は凉樹に揶揄われたくない。本当のこと言って」


目を向けるも、すっと視線を逸らす彼。


「・・・・・・、ごめん」

「何が?」

「・・・」


視線も合わせない。ごめん以外の言葉もない。そんな凉樹に、俺は吐息をもらす。


「だから、何が?」

「ごめん」

「ごめん、ごめん・・・って。凉樹、しつこいよ」

「・・・」


 彼の態度が、怒りの沸点に到達した。


「凉樹、謝るだけじゃ分からない。あぁ、もう! こんなところで怒りたくないけどさ、我慢できない。なぁ、俺のこと裏切ったって何なんだよ! どういうことか説明してくれよ!」


それでも黙り続ける。こんなの、俺の大好きな凉樹じゃない。


「・・・」

「黙ってんじゃねぇよ。ちゃんと目見て言えよ」

「・・・、ここじゃ説明できない」


彼は苦肉の策という感じで呟いた。


「じゃあどこで―」

「俺ん家、じゃダメか?」


 凉樹の家に行くとなると、約二年振りになる。彼の家に行けば、何か証拠となるものが置かれているかもしれない。だとすると、彼の隠し事の本質を問い詰めるチャンスだ。


俺は彼の策に乗った。すると彼はこっくりとうなずく。


 すぐ足元にある浅い水たまりに、幼い子供のようにわざと足を突っ込んだ。すると、勢いよく小さな水しぶきが無数に飛び散り、濡れたアスファルトの上に落ちていく。そんな水しぶきが唐突に儚く思えてくる。


大きな窪みにできた水たまりに映る俺の顔は、なんだか寂しそうだった。これからのことに不安を抱いているみたいに。そんな俺に、手を振って別れを告げた。

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