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なみだの決戦日  作者: 成城諄亮
第1章
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第三章 第17話

 和田の運転する車の後部座席に乗って、夕方の混雑する幹線道路を、一定の速度で走る車の窓に頭を預けた。


「なぁ、俺ってさ、周りからどう思われてると思う?」


ゆっくりとスピードを落としていく車。隣に並ぶ車からは、大音量で音楽が聴こえてくる。それは、事務所の先輩アイドルが出した最新シングル曲だった。


「あ、正直に言えよ。そこに遠慮はいらないから」

「じゃあ、正直に・・・。僕が思うには、話しかけにくいタイプというか、何を考えてるか分からないから、怖くて話かけられないというか」

「え、俺そんな感じなの?」

「上手く笑えてない気がします」

「それ、元アイドルとしては失格だな」

「難しいですよね。笑顔を作ることも、雰囲気を変えることも」

「そうか。なんか羨ましいよ。和田のことが」

「どうしてですか?」


ルームミラー越しに視線が合う。


「和田は俺とは反対で、話しかけやすいし、考えがすぐ読めるぐらいピュアで」

「そんなことないですよ」

「いやいや、だって―」

「実は僕、学生時代、今の咲佑くんみたいなタイプだったんです」


目の前の交差点を行き交う人々は、スーツやら女性らしい服装やら、色とりどりだ。


「クラスメイトから、お前は何考えてるか分からないから苦手だとか言われ続けて、そんな自分のことが嫌で、だったら変えてやろうって思い立って、高校入学と同時に無理してでも明るく振る舞ったんです。そしたら友達が自然と増えていったんです」

「へぇ、意外だったな」

「僕がやったことを咲佑くんに押し付けるわけじゃないですけど、咲佑くんにはもっと明るくいて欲しいです。そうしたら、心から笑えますよ」

「じゃあ、試してみるよ。ありがとな、正直に答えてくれて」

「いえ」


信号が青に変わった瞬間に、徐々にアクセルペダルを踏んでいく和田。心地よい振動に身を委ね、静かに目を閉じた。



 社長と会ってからも、一気に見える世界が違うみたいなことはなかった。朝決まった時間に起きては、朝食に食パン一枚だけを食べ、午後からは激安商品を求めてスーパーをはしごし、家に帰って一人寂しく夕食を作るという、そんな普段と特段変わらない生活の中でも、仕事へのモチベーションを上げている。ただ、配信番組の収録を一週間後に控えていたが、その収録に向けてというよりも、どちらかと言えばドラマのオーディションに合格するための準備を進めていた。


演技のオーディション自体、受けるのは二回目で、一回目は演技審査で引っかかり、その日に落選が言い渡された。落選理由は、台詞は完璧でも、心がこもっていないからというものだった。だからこそ今回のオーディションへは特別、力を入れている。せめて翌日以降も残れるように、心のこもった演技をしなければ・・・、と言うよりは、ありのままの俺を魅せなければ、合格できないような気がしている。


「今度こそは、絶対に」


握った拳の中では、汗が滲み出てきていた。

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