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なみだの決戦日  作者: 成城諄亮
第1章
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第二章 第14話

 咲佑に告白して以来、レギュラー番組の収録やそれ以外の単発の収録で忙しく、全く咲佑に会えていなかった。メールしたくても共通の話題がないせいで、結局連絡もできないでいる。日が経つごとに、本当に付き合っているのか確信が持てなくなっていた。そろそろ会いたいな、なんて思いを抱きながら仕事をしていた八月十六日、収録の合間にスマホを触ろうと電源を入れた途端、画面に一件の着信履歴が表示された。


「お疲れ様です」

「石井くん、お疲れ様。今どこ?」


電話の相手は今、各方面から引っ張りだこの女性俳優、元木奏もときかなで。年齢は俺より四つ上で、バラエティ番組での共演をキッカケに連絡先を交換。数少ない俳優の知り合いの中で、奏さんは俺によく連絡をしてきていた。どういう意図で連絡してくるのかも分からなければ、いつも内容が薄く、長い会話に発展したこともない。


普段からハチミツみたいな甘ったるい声質の奏さんだが、電話越しでもその存在感は健在で、より濃厚さが増す。


「番組の収録でテレビ局に」

「へぇー。あっ、ねぇねぇ今夜ひま?」

「えっ、今夜ですか?」

「うん、そう今夜」


奏さんの意図するところは掴めない。今、俺はどういう顔をしているのだろう。


「収録が終われば大丈夫です」

「よかった。ちょっといいお店があるから、連れて行ってあげたくてね。それで連絡したの」

「そうなんですね。ぜひお願いします」

「じゃあ場所と時間はメールするね」

「分かりました。ありがとうございます」

「それじゃあ」


 楽屋のドアがノックされ、スタッフの一人が顔を覗かせ、収録を再開すると伝えてきた。再びスマホの電源を落とし、鞄の中に入れ込み、楽屋を出た。時刻は十六時を過ぎたところだった。


 番組収録が終わったのは、指定された待ち合わせ時間ギリギリの、十八時二十分だった。急いで衣装から私服に着替え、鞄を背負い、中々来ないエレベーターの到着を少し苛立ちながら待ち、ロビーで待っていたタクシーに乗り込み、レストランのある場所を伝え、電気がまだ灯り続けるテレビ局を後にする。車に乗れば順調に行けると思い込んでいたが、レストランがある方向に延びる幹線道路は、事故の影響により渋滞していて、到着が何時になるか分からないと運転手から告げられた。そのことを謝りの文章とともにメールで伝えた数秒後、可愛らしい熊のスタンプが返ってきた。窓に映る顔は微笑んでいた。

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