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なみだの決戦日  作者: 成城諄亮
第1章
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第三章 第12話

 カフェの目の前にある小さな交差点。目の前を車が去っていく。信号が変わるまでの間に呼吸を整える。スマホの画面に表示された時刻は、待ち合わせの六分前だった。


 扉が開くと同時に、スイーツに使われているバターの芳醇な香りが鼻に抜ける。俺に気付いたのか手を挙げた凉樹。笑みを浮かべた。


「いや、何で笑ってんだよ」

「変わらないなって思ってさ」

「グループ抜けたからって唐突に変わらないよ」

「まぁそうだよな」


 注文を取りに来た店員が、「ご注文はお決まりですか?」と言うので、「いつもので」と凉樹が答えると、にこやかな表情を浮かべて「かしこまりました」と二人の元を去る。


「話って何?」


俺は顔を近づけた。彼の瞬きが多くなる。


「聞いて驚くなよ」

「何々?」

「俺、十月から始まる新しいバラエティ番組のレギュラーに選ばれた」

「おぉー・・・、って、え! まじか!」


女性客で賑わいをみせるカフェにいるのに、その場に似つかない声のトーンで言ってしまった。周りからの視線が突き刺さる。


「声大きいってば」

「ごめんごめん。だって驚いたんだもん。仕方ないだろ?」

「だよな。俺もまさっきぃから電話で聞いたんだけどさ、家で一人喜んだよ」


たぶん凉樹は茶色のソファの上で喜んだのだろう。そんな彼のことが愛おしい。


「喜んでる凉樹の姿が簡単に想像できる」

「うそ」

「ホント。そもそも俺ら何年も一緒に過ごしてきたんだから、それぐらい分かるって」

「あぁまぁそうか。俺ら付き合い長いもんな」

「そうだよ。これからも俺は凉樹と付き合いたいけどな」

「俺も。俺、咲佑がいないと駄目みたいだからさ」


そう言われた瞬間、胸は激しめな音を立てた。もしかしたら聞かれたんじゃないかと思うぐらいだった。平然を装いたい。その思いで俺は口を開く。


「とにかく、レギュラー決定おめでとう」


違う。そうじゃない。おめでとうは合ってるけど、伝えるタイミングは今じゃない。本当は告白めいたことを言いたかったのに。それが言葉として出てこなかった。


「おう」


目の前に座る凉樹は、頷くような瞬きをしたあと、ふふっと可愛く微笑んだ。彼のせいで、平然を保てなくなってきている。俺は、凉樹に操られているのかもしれない。だったら俺は凉樹の操り人形になって、一生操られ続けたい。このほうが俺にとったらいい未来なのかもしれない。

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