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なみだの決戦日  作者: 成城諄亮
第1章
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第二章 第11話

 夏休みシーズン真っ只中の八月。各地で猛暑日が記録され続けているというニュースが流れてくる。外を歩けば公園で水遊びをする子供や、エアコンの効いた室内で課題に取り組む学生の姿など、夏休みをそれぞれ謳歌する人たちをみて、凉樹は仕事へのギアを一段と上げていた。


 咲佑が事件に巻き込まれたという話をしたあの日から、四人は個人仕事で忙しく動いていた。そのことを機に、正木以外に新たに一人、福本というマネージャーが付き始め、主に正木が凉樹と朱鳥を、福本が夏生と桃凛を担当するという流れに変わった。凉樹含めメンバーたちは、グループとマネージャーで共有しているスケジュールアプリでしか互いの動向を把握しておらず、メンバー間の連絡も自然と途絶えている。


  *


 八月四日。この日も昼前から猛暑日を観測する暑さだった。


久しぶりにできた二連休。といってもやることが特になく、俺は家でのんびりと映画を観ていた。面白くない内容に飽きてきたと同時に、最近の睡眠不足からか睡魔が襲い始めてきていたそんな時、テーブルの上に置いていたスマホが音を立てながら振動し始めた。画面には正木の文字が表示されていた。


「もしもし?」

「せっかくの連休中に悪いな」

「いいよ、別に。家にいるだけだから」


俺が半笑いの状態で答えると、向こうは慣れた感じで「そうか」と言う。


「で、どうしたの? 何かあった?」

「凉樹に新しい仕事獲ってきた」

「どんな?」

「十月から始まる新しいバラエティ番組。旅系のやつ」

「へぇ、面白そう」

「しかも、聞いて驚くなよ」

「え、何」

「ゲストじゃなくて、レギュラーだ」


 リモコンを操作して映画を一時停止させる。止めたタイミングが悪く、主演俳優は瞬きの途中で白目になっている。


「え? レギュラー?」

「そうだ。詳細はまた後日連絡するから」

「分かった。ありがとな」

「じゃあ、お休み中に失礼しました」

「はいよ。またな」


 正木との通話を終え、ソファの上で一人喜びをかみしめる。でも、この喜びを共有したい。そう思い立ったとき、抱いていたスマホを操作し、あの男に連絡する。


「もしもし?」

「咲佑、今暇か?」


咲佑は電話の向こうで笑いながら答えた。「あぁ。いつでも暇だよ」と。こう聞くこと自体、愚問だ。だが、後戻りできそうになく、そのまま話を続けることにした。


「あのさ、今から会えないか?」

「急だなぁ」

「俺が会いたいんだよ。駄目か?」

「え」


まるで息を吐くように言う咲佑。一瞬だけ心が揺らぐ。


「咲佑に言いたいことがあってさ」

「え、何だよ。今教えろよ」

「嫌だよ。直接会って話がしたいんだからさ。な、いいだろ?」

「しょうがねぇなぁ。会ってやるよ」

「ありがとな。じゃあいつものカフェに十四時で」

「分かった」

「じゃあな」


 電話を切ってすぐ、出かける準備に取り掛かった。止めていた映画を音楽代わりに聞き流しながら、クローゼットの中からお気に入りの服を取り出し、着用する。そして寝ぐせのままだった髪型を洗面所で整えた。現場に行くよりも丁寧に。好きな人とデートに行くような、浮かれた気分で。

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