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なみだの決戦日  作者: 成城諄亮
第1章
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第二章 第4話

 四人は仕事や学業の忙しさに身を任せ、咲佑のことを忘れようとした。だが、四人とも片時も忘れることができなかった。凉樹に至っては収録中にミスが目立ち、番組プロデューサーから注意されるほど。四人は咲佑の無事を祈りながら連絡を待ち続けていたが、その思いは通じることなく、丸二日間、咲佑からの連絡が来ることはなかった。正木にも、そして咲佑のマネージャーである和田の元にも。


 正木からの話によると、和田はその間、何度も咲佑の住むアパートに足を運んだが、いつ行ってももぬけの殻のままだったらしく、最終的には隣の住人から「ずっと家に帰ってきていない」と言われたと電話があり、正木は和田を連れて社長のところへ行き経緯の説明をすると、警察に相談しろと言われたらしい。そして、今に至っている。


 朱鳥と凉樹は同じ番組のゲストに呼ばれ、十四時半からの収録に向けて正木を含めた三人は、こじんまりとした楽屋で過ごしていた。その間も凉樹は咲佑のことだけを考え続けていた。プライベートよりも仕事を優先すべきなのは理解している。でも、やっぱり咲佑のことが気になっている。


「咲佑の奴、何やってんだろな」

「まさっきぃ、さすがの俺でも分からないよ」


半笑いの状態で伝えると、正木は頭を掻きながら「だよな」という。


収録が開始されるまでの間、俺は朱鳥の趣味についての話を聞いていた。朱鳥と話していれば楽になるが、どうしても頭の中では咲佑の二文字が駆け巡る。咲佑が失踪していても、してなくても、今すぐにでも会いたい。会いに行きたいという気持ちで溢れていく。


 あと十分もしないうちに収録開始時間を迎えるというなかで、突然、凉樹のスマホが机の上で振動し始めた。会話の流れ上、朱鳥と笑い合いながら画面を見たが、表情筋が一瞬にして強張った。


「わりぃ、ちょっと電話出てくる」

「分かりました」


俺は朱鳥に見えないようスマホの画面を手で覆い、楽屋を出て人目が避けられる場所へと向かい、電話に出た。目の前を小柄なスタッフが、髪を左右に揺らしながら走っていく。


「無事でよかった」


相手は俺の質問に何も答えようとしなかった。もしかしたら違ったか・・・。電話の向こうから聞こえてくる荒い息遣い。聞き覚えがあった。


「咲佑、どうした?」

「ごめん」

「ごめんって何が?」

「事件に巻き込まれた。そのときにスマホが壊された。今は皆が住んでるマンション近くの公衆電話から電話してる」

「事件って・・・。それより、お前は大丈夫なのか?」

「あぁ。殴られたみたいだがな」

「殴られたって、どういうことだ?」

「憶えてないんだ」

「は?」

「悪い。小銭がないからこ―」


咲佑が何か言いかけたところで、音声は無残にも切られた。


事件。スマホが壊された。殴られた。憶えていない。たった十五秒ぐらいの間に言われた言葉はどれも現実離れしていて、その言葉だけが独り歩きしているみたいだった。

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