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なみだの決戦日  作者: 成城諄亮
第1章
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第三章 第1話(咲佑)

 NATUralezaを脱退し、ソロ活動を始めて三か月が経った今、脱退したら何か違う道が見えるかもしれないと淡い期待をしていた自分が馬鹿らしく思えていた。それは、この三か月でマネージャーが獲ってきた仕事が一本だけだから。


でもそんな俺のことを見捨てないでいてくれる男がいた。付き合って欲しいと告白され、付き合うことになった。これから先どんな幸せを築こうかと想像して、仕事がないことの煩わしい気持ちを忘れていた。デートの誘いが来なくとも、ずっと彼のことだけを信じていた。なのに、なのに彼は俺のことを平気で裏切った。


「もうこの世界に俺の味方をしてくれる奴なんていない。誰かのために生きるなんて、最初ッから間違ってたんだ」


  *


 七月三日。清々しいほどの青空が広がっている。ソロになって初めての仕事は地方の、しかも出身地のテレビ局のロケ。仕事内容は今話題の心霊スポットを売れていない芸人と、近所じゃ有名だという胡散臭さマックスの霊媒師とともに紹介という、何とも地方らしいもの。新しいマネージャーである和田の運転で現地に向かい、二十三時過ぎから朝方四時まで心霊スポットでカメラを回し続け、何枚か心霊写真っぽい感じの集合写真を撮影し、ロケ後に念のためだという霊媒師からの除霊を受け、四時四十五分に初仕事は終わりを迎えた。


 ロケ地が地元だったために、帰省も兼ねて俺は実家に寄ることにしていた。現地で和田と別れ、実家に帰ったのは六時過ぎ。そんな時間でも家に入ることができ、早起きの母親手作りの朝食を食べた。そのあとは父親の趣味である家庭菜園の収穫作業を手伝い、幼少期からよく行っていた洋食屋へお昼を食べに行き、夕食も母の手料理を食べるという、実家ならではの時間を満喫した。三十分ほどの仮眠を取ったあと、十九時過ぎに風呂へ入り、着てきた服をそのまま着て、自室に残っていたTシャツ二枚だけを鞄に詰め、二十一時に実家を出た。


 駅までは徒歩で三十分かかる。その道中は田舎ということもあって街灯は少なく、通い慣れた道とは言え、少しの恐怖感も覚えていた。


 二十二時六分の最終便に乗り、乗り換えの駅に着いたのが二十二時五十五分。そこから都会に向けて走る電車に乗り、自宅のある方向の最終駅に着いたのが深夜一時を余裕で過ぎた頃だった。ここから自宅まで歩けば二時間以上かかる。眠気もピークを迎えていたために、帰宅途中にあるネットカフェに入り、そこで三時間ほど滞在した。朝四時を過ぎた頃に目覚め、金銭を払ってネットカフェを後にした。


 自宅までの約一時間半の道のりを、ゆっくりと歩く。町並みは高いビルが立ち並ぶエリアから、次第に低い建物が目立つ郊外に変わっていく。早朝だけあって、新しく引っ越したアパートの付近の人通りはまばら。前よりも田舎なところに来たと思いつつも、地元に近い雰囲気に惹かれて越してきたために、人通りのことなど、そこまで気にしていなかった。どこか安心しながら自宅までの道を歩いている途中、俺は男二人組に声をかけられた。


「米村咲佑じゃん。俺と握手してくれよ」


相手が差し出した手。俺も手を差し出したところ、もう一人の男にもの凄い力で腕を掴まれ、バランスを崩したタイミングで地面に身体を強く打ちつけた。これが悪夢の始まりだった。

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