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なみだの決戦日  作者: 成城諄亮
第1章
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第一章 第11話

 まっさらだったホワイトボードは、会議を始めて一時間もしないうちに黒で埋められた。決定事項には赤線が引かれるなど、桃凛による工夫がされ、一番の重要事項である配信の二文字には明かり丸が書き加えられていた。


「会場は使えるかの連絡待ちだが、配信することは決まったから、あとはセトリ決めだな」


腕を組んだまま、何か考え事があるかのような感じを含めて言う凉樹。男らしい喉仏が彫刻のようにはっきりと浮かび上がっている。咲佑は思わず見惚れてしまう。


「ですね。いつ決めますか?」

「四人がいいなら今日詰めるところまで詰めておきたいんだが、どうする?」

「俺はいいっすよ。でも夏生は仕事があるんじゃ」

「明日は午後からなので問題ないですよ」

「そうなんだぁ。僕も学業のほうは順調なので大丈夫ですよぉ」

「で、咲佑はどうだ?」

「俺も今日決めるので構わない。決められるんなら早めに決めて、準備に時間をかけたいからさ」

「じゃあ決まりだな」


 凉樹は椅子から立ち上がり、ゆっくりと伸びをする。それに釣られるかたちで朱鳥と夏生も脚や腕を伸ばす。桃凛はスマホでカメラ機能を立ち上げ、ホワイトボード全体が写る構造で写真を撮る。咲佑は四人のタイミングが良さそうなときに、尋ねた。「なぁ、少し早いけど今からお昼休憩入れないか?」


「いいっすね」

「どこかお店入りますか?」

「四人はどこか行きたいところある?」

「俺はラーメンっすかね」

「僕は肉が食べられたら。なのでラーメンでもいいですよ」

「僕も夏生くんと一緒でぇ、お肉食べたいです」

「凉樹は?」

「俺はどこでも」

「じゃあ、駅前のラーメン屋に行くか」

「いいっすね。あそこなら席数多いですもんね」

「だな。じゃ行くか」


 五人は少し早めの昼食を食べに行く準備をする。それぞれが暖かそうなアウターを羽織り、荷物を持ち、会社から徒歩十分の距離にあるラーメン店に向かった。


その道中も食事中も五人は飽きることなくしゃべり続ける。常に会議が開かれているみたいな状態だった。仕事のことは周りの人たちに気付かれないように小声で、個人的なことは迷惑にならない程度の声量で話す。お昼を揃って食べるのは久しぶりで、普段よりも濃厚な時間を過ごした五人。休憩後もノンストップでセットリストを決めたりするなどの会議を続けた。



 太陽は山の向こうに沈もうとしている。十時半前に開始された会議も、お昼休憩も込みで十六時半過ぎまで行われた。五人は区切りがついたところで帰り支度をし、正木と次の会議予定を共有する。


「もうすぐ十七時回っちゃいますけど、まだまだ話してたいっす」

「今日の朱鳥はやけに熱量があるな」

「そんなことないっすよ。いつもどおりっす」

「じゃあ、せっかくだし昼の話の続きも込みで、呑みに行くか?」


凉樹は手で酒を呑むポーズをする。それを見た夏生と桃凛の顔がパッと晴れる。


「いいですね!」

「僕も今日は久しぶりに呑みたい気分なんで、連れてってください」

「そうだな。今日は五人で呑み交わすか」

「はーい。行きましょ」


メンバーのやり取りを、目を細めながら聞く正木。シルバーの腕時計を確認し、「みんなお疲れさん」と声をかける。


「とりあえず上に報告しておくから。今日の打ち上げ楽しめよ」

「ありがと。今度はまさっきぃも一緒に行こうな」

「そうだな。咲佑のおごりでな」

「分かってるよ。また誘うから」

「おう」


正木は軽く手を挙げる。咲佑は歯をうっすらと見せて微笑んだ。


「頼んだよ、まさっきぃ」

「おう。任せとけって」

「もし駄目そうなら早めに連絡して」

「分かった。とりあえず打診しての結果を連絡するから」

「ありがとな」

「じゃあ、お疲れ」

「お疲れさん」


今から向かう先で待っているのは、おいしい料理とお酒で客をもてなしてくれる居酒屋緋廻。お酒を呑み交わし、美味しい料理を堪能する。芸能人であることを忘れさせてくれる、そんな空間を求め、五人は会議室を出た。

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