<第三話:トント覚醒!(笑)>
右手を消毒した翌日。
朝からトントはご機嫌だった。
「ヒャッハー!もぐもぐ、まみーーーうまじぇーーーー!!もぐもぐ」
元気にご飯を食べる息子をまじまじと見ながらシデラードはぽつりとつぶやく
「ものすごく驚いたけど。。。驚きすぎて別の人格が一瞬降りてきちゃったけど。。。トントが元気そうでよかったわ。。。」
あんなことが起こった後も翌日の朝にはピンピンしている姿を見て(なんならその日の晩御飯の時ですら元気だったけど)、トントの回復力に驚く。
しかし、「(まあでも、、、父親に似たらなそれもありえるかな?)」とトントの異常さにギリギリ気がつけないシデラード。
ただ、あれからトントが台所にあまり近寄らなくなったので、「火の怖さは分かってくれたかな?」と一応は安心をする。
しかし、その認識は完全に間違っていたのだった。
……………
…………………………
………………………………………
右手消毒直後。
トントは「魔法」を母を通して直に体験したことで、「自分も魔法を使えるようになりたいぜぇ!」という強い想いを持つようになっていた。
母に運んでもらい自分の部屋のベットで横になった後に、火傷をした右手を見ながら考える(トント凄い!考えるだって?!)。
思考の末に、トントの脳裏に電撃が走る。
「ピーーン!(ハッッ!確かマミィは「魔素の吸収」がなんとかって言ってた気がするなぁ。つまりは、、、呼吸をいっぱいすれば「魔素」も吸収できるってことだぁ!!ヒャハー!そうと決まれば深呼吸だぜぇー!!!)」
(深呼吸する音)
ヒャーーーーー ハーーーーー
ヒャーーーーー ハーーーーー
ヒャーーーーー ハーーーーー
冴わたる考察。(笑)
そして、考察をすぐに行動に落とし込む圧倒的な行動力。(笑)
『魔法を使えるようになる』という強い目的意識により、トントの思考能力が(極めて低いレベルで)上がっていた。
これはまさに トント覚醒っっ!!!!(笑)
実際のところ、吸収=呼吸はあながち間違っていなかった。
魔素は大気に存在しており、呼吸や肌からの吸収によって緩やかに蓄積される。
体に魔素が一定数たまると目に見える効果を伴い外に放出できるようになり、その事象をこの世界では「魔法」と呼んでいるのだった。
もしこれを言葉でトントに説明しようとしていたならば、、、
おそらく何年かかっても伝わらなかっただろう。
(そのまま大人になっていたら、魔法を一切使わないバーサーカーとして有名になったに違いない。)
あまりにも馬鹿すぎるだろう。あ、いや、感覚派。もう超感覚派。
そのため手を消毒した一件は、魔法に直に触れることができ、魔法への理解が一気に進む出来事となった。
(深呼吸する音)
ヒャーーーーー ハーーーーー
ヒャーーーーー ハーーーーー
ヒャーーーーー ハーーーーー
そうしてその日の夕ご飯には、トントはある程度魔素を吸収できて(呼吸=吸収で間違ってないとはいえ、吸収率が明らかにおかしいレベルなのだが...)自己治癒ができるまでになっており、めでたく自分の手でご飯を食べれるようになっていたのだった。