プロローグ
ゴリゴリの熱帯雨林。
色とりどりの動植物たち。
もし取り残されたら「あ、死んだわ」と感じるくらい、力強く自然の魅力を体感できる場所。
そんなジャングルの中に急に現れる、場違い感のすごい豪華な看板。
看板には、謎のファンキーな老人の絵と、ギラギラに装飾された文字で『コングタウン』とかかれている。
正直悪趣味だ。
その先には、看板の印象からは想像できない程穏やかな、自然と建物が見事に調和した村がある。
ここではゴリラの亜人を中心とした60人あまりが静かに暮らしている。
心根の優しいゴリラの亜人の作る村には、活気がありながらも穏やかな空気感が漂っている。
そんな穏やかな日常をぶち壊す様に、ここら辺では聞きなれない爆音が村の中央広場から聞こえて来た。
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ブァーーーーーンブァンブァンブァン
「ひゃっはーーーーーーーーーーーーーー!!!」
爆音と共にバイクが暴走をしている。
パッと見 誰も乗っていないバイクに通行人は驚く。
ただ、よくよく見ると運転してるのがハンドルに手がギリギリ届く程度の幼児だと分かると、その姿に全員が3度見をする。
だれも状況が理解できない。
そして、少し遅れてバイクの後を女性の亜人が必死に追っている。
「ま、待ちなさい!トント!止まりなさい!!お願いだから!!まっ…まって!お、追いつけない、、、なんでそこそこ乗りこなせてるの!!!?」
いったいなぜこんな状況になってしまったのだろう??
…………….
…………….…………….
…………….…………….…………….
それは1時間ほど前にさかのぼる。
ゴリラ族の亜人シデラードは、4才の息子トントと村の中心に散歩にきていた。
王都でトントにお土産を買って来たからおいで、と前村長からテンション高めに呼び出されたからだ。
お土産は嬉しいが、『前村長』というだけでシデラードの足は重たくなる。
「(前村長…ロクなことをしない人だし、興味もないし、もう見るだけでイライラするから行きたくないのだけど。。。わざわざトントにお土産を買ってくれたみたいだから、流石に無視する訳には行かないわね)」
「(はぁ、夫に命を助けられたから って色々面倒見ようとしてくれてるけど…変人だから面倒ごとになる方がおおいのよね)。。。」
そんな気苦労をよそに、隣でえっちらおっちらと歩くトントは終始ご機嫌そうだ。
「うふふ、トント、お土産が楽しみなのかな?なにか良いものを貰えるといいね〜」
シデラードがそう声をかけると、トントはにっこりと笑う。
ほのぼのと散歩をしながら2人は目的地へと向かっていった。
村の中心につくと、そこにはあの悪趣味な看板に描かれていた老人ーーー前村長が満面の笑みで待ち構えていた。
シデラードはその笑みに嫌な予感を感じる。
「前村長、お土産ありがとうございます。今回は何を買ってきたんですか?今回はへんなものじゃないですよね、この前勝手に悪趣味な看板作って全員から袋叩きにあったことは忘れてませんよね??」
『そんなことあったっけ?』と前村長はキョトンとする。
自分にとって都合が悪い事は本当に忘れてしまうらしい。
「ほ?ほぁーー、、、うん?(何のことじゃっけ…) ま、まあきくのじゃ、今回も凄いぞい。トント坊やが大喜びする事間違いなしじゃ!」
布で被されたナニカをなでながら、自信満々に言い放つ。
「わしが今回村の金を使って、わざわざ買ってきたのはこれじゃ!!!」
バサァ!
布を取るとそこには…ゴツめのバイクがあった。
「前村長…あなた、、、これ自分が欲しかっただけでしょう?!それに!今!村のお金って言いましたよね!?本当に何してるんですか!!トントの為っていうのは言い訳に使いたいだけでしょう!!!」
「え!?な、、、なんのことじゃろ。さっぱりわからんのぅ。わしは村のみんなとの約束通り、子供達のためになるものを買ってきて モニョモニョ」
前村長は目を泳がせながら、しょうもないゴタクを並べる。
「こっ、このクソジジイ!やっぱり今回もやらかしやがったか!そもそも子供がバイクに乗れる訳ないでしょう!みんなーーー!!!集まって!逃げる前にこのジジイを締めましょう!!」
「はっ、甘いわ!今回ワシには逃げ切れる足があるんじゃ〜〜…い、ん?ワシのバイクはどこじゃ?」
ここで冒頭のシーンにつながる。
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ブァーーーーーンブァンブァンブァン
「ひゃっはーーーーーーーーーーーーーー!!!」
爆音と共にバイクが暴走をしている。
パッと見 誰も乗っていないバイクに通行人は驚く。
ただ、よくよく見ると運転してるのがハンドルに手がギリギリ届く程度の幼児だと分かると、その姿に全員が3度見をする。
だれも状況が理解できない。
そして、少し遅れてバイクの後を女性の亜人が必死に追っている。
「ま、待ちなさい!トント!止まりなさい!!お願いだから!!まっ…まって!お、追いつけない、、、なんでそこそこ乗りこなせてるの!!!?」
「だ!誰か!うちの子を止めてください!!!」
周りに呼びかけながらふと横をみると、前村長が『ホラ、のれてるじゃろ、わし、いい買い物したじゃろぉ?』とでも言うかのようにニタニタしている姿が目に入る。
こっ…このクソジジイ!
前村長を射殺さんばかりの視線で睨みつけながら、全力疾走でバイクを追う。
「(なんなの?!バイクに呪いでもかかってたのかしら??とにかく止まって!!!あと前村長に天罰を!!!)」
そして、、、
ドドドドドドド...バッコぉーーーー!!!!!!
器用に人をすり抜けながら、街の中心を一周した頃に、バイクは止まった。
前村長に激突することで。
スポーン!と投げ出された我が子をなんとかギリギリで受け止めたシデラードは、色々な汗でぐっしょぐしょになりながらも、まずは我が子トントの安全を確認する。
「ひゃひゃひゃーーーー!!!」
なんだか、、、とても元気そうだ。
「はぁ、はぁ、はぁ、、、ト、トント。。。やっと捕まえたわ。。。この子は一体 ど、どうしちゃったのかしら」
子供をしっかりと抱きしめ、一安心をしたところで我が子をあらためてみる。
「ゲラゲラゲラ、ヒャッハーーーー!!!」
この子、、、目がイっちゃってる。
…この子は本当にうちの子なのだろうか?
「(いけないいけない、こんな事があったらそうなるものよね!きっと。それに、森とは違う王都の魔素がバイクについてて、それを吸収しちゃってハイになってるだけかもだし!)」
トントの母、シデラードはそうつぶやいて、なんとか気を取り直す。
「ぐっぐううう〜〜」
ふと、くぐもった声が聞こえてくる。
ちらりと地面をみると、そこには血を流して痙攣している元凶(前村長)がいた。
助けてもらいたそうにこちらを見ている。
シデラードは、冷めた目で一瞥したあと、放置をして帰路につく。
「はぁ、トント、今日は大変な日だったわね。とても疲れたわ。。。でも、あなたが無事でよかったわ。」
そんな母・シデラードを見ながらトントは笑う
「あぅ〜〜〜〜〜〜〜〜ニチャア(マミ〜〜〜〜〜、俺は思い出しちまったんだヨォ 前世の記憶をなぁ!)」