遂に行ける、異世界へ
いきなり敵に遭遇します。急展開です。
俺は神様と相談しながら決めたチート能力を貰った。
「これだけチート能力があればすぐに魔王を討伐できますよね?」
「魔王は強いからまだわかわないよ」
チート能力が合っても勝てないかもしれないとは、どれほど強いのだろうか、想像しただけでも恐ろしい。
だが、こういうパターンは大体無双できる気がする。数は少ないがラノベを読んできた俺ならわかる。
「とりあえず、早速行ってもらおう」
「かしこまりました」
遂に異世界へ行くときが来た。嬉しいとは思わないが、ワクワクしてきた。
神様が手をかざす。瞬間、俺は光に包まれ、意識が朦朧としてきた。
「では、行ってらっしゃい」
消えゆく意識の中で、神様の優しそうな声が聞こえた。
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目が覚めた。俺は野原のど真ん中に立っていた。
何故立っていたのだろうか。
「広大無辺な草原だな、周りを見ても何も見えない。こういうパターンで来たか」
ここまで広いと、歩きたくない。歩いたら迷う気がする。しかし、歩かないと何も起きないので意を決して一歩を踏み出す。
風が適度に吹いていて気持ち良い。こんなにも気持ちが良いと気分が晴れやかになってくる。
「一応最初にいた場所に印を付けておこう」
俺は炎系のスキルを使い、火柱を立てる。半径2メートルくらいの大きさの火柱が勢いよく空にそびえ立つ。自分で出した火柱で尻込みしそうだ。
周りに火が飛び移ってない事の確認して、俺は火柱を消す。
どこからか物音が聞こえてきた。
「あれ、音は出ないって言ってたはずなんだけどな。もしかして火を怖がらないのか?」
高い火柱だったから恐れて離れるかと思っていたが、違ったらしい。
おそらく敵がこちらに近づいて来ている。迎え撃つ準備をしなくてはならないな。
『多分逃げた方が良いと思うよ』
「なぜですか?チート能力を持っているなら大丈夫だと思うのですが……」
チート能力を持っているなら敵を難なく倒せると思うが、初めての戦闘だから神様からの忠告だろうか。しかし、チート能力を持った俺なら余裕で勝てると思うのだが。
そんな事を考えている間に敵が来てしまった。イノシシのような敵だった。
『まあいいか。戦ってみたらわかるよ』
意味深な事を言われて、少し引っかかった。しかし、敵が突っ込んできたので気にする余裕はない。
俺は敵を迎え撃つために攻撃用スキルを用意する。
「えっと、相手は普通の動物っぽいし、[火炎放射]でいいかな」
状態表示画面という、ラノベで言う所のステータス画面を開く。スキルを使うのに一番気軽なのがステータス画面からタッチして使う事であるらしいので、俺もそうする事にしたのだ。もっと速い方法でもできるらしいが、そちらはスキルをタッチする方法で使うのに慣れないとできないらしいので保留との事。
正式名称なのかはわからないが、スマホの検索機能と似ているもので[火]と入力し、[火炎放射]を選択した。瞬間、火力が高いであろう炎が俺の目の前に現れる。その炎が容赦なくイノシシに襲いかかる。
「すごいな。周りの草が燃えてるし、これは倒せたかな」
視界全体に入ってくる炎に、熱風が俺の顔に直撃する。そして、耳を塞ぎたくなるような轟音に少し恐怖を覚えた。
俺は敵を倒せたと確信した。しかし、炎の中から燃え盛った何かがこちらに突っ込んできた。咄嗟に横に避ける。
「……もしかして、さっきのイノシシが突っ込んできたのか?」
なんと凄まじい生命力だ。体が燃え盛っているというのに、気にせずこちらに突っ込んでくるなんて、何か耐性でもあるのだろうか。しかし、目の部分まで燃えているためこちらは見えないはず、ここで追撃をかまそうとステータス画面を開く。
だが、相手はまたこちらに向かってくる。何故かはわからないが、相手は燃えているのに俺が見えているらしい。
「やばいやばい、本当にやばい!!どうするんだよこれ!!」
相手がいつ倒れるのかを確認するために、[もっと鑑定スキル]という、相手のステータスを覗ける[鑑定スキル]の上位互換を使用する。しかし、相手のステータス画面が表示されない。
「なんで使ってるのに出てこないんだよ!!」
敵が突っ込んでくるのを避けながら、ステータスが表示されない理由を考える。早く対処法を考えないとならないのに、想定外の事が起こって上手く考えをまとめられない。
『相手が[鑑定スキル軽減100%]を持っているからね。君が普通に使ってもステータス画面を開けないよ』
「は?」
[鑑定スキル軽減n%](nは任意の数)は持っている人が多いとは聞いていたが、50%より上は持っているやつがいないと聞いていたから俺は驚愕する。普通に持っているやつがいるではないか。しかも、普通の敵が持っている。
『一応鑑定する方法はあるけど……自分で考えた方が面白いよね、頑張れ』
「ま、待ってください!!」
返答はなし。イノシシは倒れる気配もなく、炎が段々と弱くなっている。
絶望的な状況に途方に暮れながら、俺はこの状況の突破方法を必死に考えた。
次回は異世界の敵の秘密を出します。