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ずっと、一緒にいるって約束したよね

作者: 三日月

※誤字、脱字が多かったので訂正しました。


※作品の向上の為、文章で直したほうが良い箇所があればご指摘宜しくお願いします。


 


※こちらの作品は、主人公が前向きに生きていくお話ですので、幸せになるとかではありません。

※もう少し長いお話にしたかったのですが、最後に今迄より幸せになる訳では無いので短編にしました。

 

 

 ――あれは丁度一ヶ月前、結婚式を控えている矢先の出来事だった。

 僕が世界で一番愛している志穂が亡くなったのは。

 早朝、仕事に行く準備をしていると、普段こんな時間帯に鳴るはずのないスマホが鳴った。

 

 こんな時間に一体何だろう?

 友達ってことも、志穂からってことも無いから、もしかして会社からなのかな。


 起きた時、枕元に置いてあるスマホを持たずにリビングに来てしまったので、まぁイイかと思っていたけど、その電話は一向に鳴り止まない。

 僕はとうとう鳴り止まないスマホが気になり、寝室に置き忘れたスマホを取りに取りに戻ることにした。

 手に取り確認すると、電話に記された番号はスマホからで、それも見たところ全然知らない番号だと分かる。

 

 やっぱりスルーしてもいいかな。

 知らない番号って怖いよな。


 

 ところが、スマホを取りに行き、そんなことを思っている間もスマホは鳴り止まず、出なさいと言わんばかりに鳴り響いている。

 仕方ない、もしかしたら間違い電話の可能性もあるだろうけど、せっかく取りに来たのだか出るだけでてみようと思い、朝の忙しい時間帯なのに電話に出てみることにした。


「あ、もしもし」

「もしもし、藤倉、藤倉直樹さんの電話でしょうか?」

「はい、そうです藤倉直樹ですが」


 声を聞いて年配女性からの電話だと分かる、それも、最近何処かで聞いたことのある声だなと直ぐに思った。

 でも。知ってる人のはずなのに、声だけでは誰かなのかまでは思い出せない。


「どちら様でしょうか?」

「私、杉村志穂の母です」

「志穂さんのお義母さんだったんですね、おはようございます」

「あの、藤倉さんにお伝えしなくてはいけないことがありまして、その、志穂が、志穂が亡くなりました」


 突然の報告⋯⋯頭ん中が一気に真っ白になった。

 

 今の一言は一体何だ!?

 死んだ?

 嘘だろ、何だよイタズラ!?

 えっ。そんなわけあるかよ⋯⋯。


 言ってる事の意味は分かるけど、理解したくなかった。

 信じられるわけが無い、だって昨夜僕は美穂と電話で話をしているのだから。

 嘘であって欲しいと強く思った。

 ところが、志穂のお義母さんだと言った年配女性の人は、電話越しで泣いている。


「あの、本当に志穂さんのお義母さん何ですか?」


 ついこの間、一緒にお花見に行っているので、絶対聞いたことのある声なのに、信じたくない思いから本当にお義母さんなのか疑ってしまう。


「……あの、本当に志保のお義母さんですか?」

「疑いたくなる気持ちはわかります、でも、先日お会いしたばかりじゃないですか?」

「それはそうですが……あの、何で、何で志穂は亡くなったんですか?」

 全く信じられずにいる、昨日だって夜も寝る前に雑談して、お休みって話しているのだから。

「……自殺です。  ごめんなさい、私が一緒に暮らして居ながら⋯⋯」


 自殺!?

 これから僕達の結婚式が控えてるというのに!?


「何で、何で志穂さんは自殺を⋯⋯」

 現実を受け入れないといけない状況と、受け入れられない自分が混在していた。

「志穂の手帳、それからスマホを見て分かったんですが、どうやら、実の母と連絡取ってたようなんです、藤倉さんはそのことを知ってましたか?」

「実の母!?  いいえ、全然知らなかったです」

「そうなんですね、あの子誰にも言わなかったんですね」

「一体何があったんですか?  教えて下さい!」

「話すと長くなるんで、良ければ来て貰えませんか?」

「分かりました、御自宅迄伺います」


 電話を切った手が震えていた。

 目から泪がどんどん溢れ出てくる。

 こんなにも人を好きになって愛していた女性なのだ。

 結婚式も目前、ずっと一緒にいようって話してたのに。

 何で僕に相談してくれなかったんだよ!!

 何で志穂は僕に黙ったまま⋯⋯。

 辛くて、胸が苦しくて、僕は寝室で一人、床に落ちる涙を止めることが出来なかった。



 早朝、こんな時間に連絡を入れるのは非常識だとは思ったが、会社には有給を使い、諸事情で休むと連絡を入れた。

 泣いた後で、声がいつもと違ったから、事務の担当女性の人に体調の心配をされたけど、流行りのコロナでも、インフルエンザでもない事を伝える。

 朝食用に用意したコーヒーと、トースターで焼いたパンは喉を通る気がしないのでそのままにして、僕はスーツ姿のまま車に乗り込むと、ここから一時間ほどの場所にある志穂の実家へ行く為、車のエンジンをかけると志保の実家の住所を打ち込み車のナビをセットした。

 まだ、早朝ということもあってか、通勤ラッシュとは重ならず、道は混んでいないのでスムーズに進んでいく。

 震える身体と、止まらない泪、事故に合わないよう普段なら車の中で音楽をかけるけど、こんな時だからこそ、何も聞かずに運転に集中した。


 これからも、ずっと一緒に居るって約束したのに!

 何で、何で志穂は⋯⋯。


 運転中、繰り返しそう発したていた。

 昨日まで話していたのに⋯⋯大好きな志穂がこの世を去る何て考えたことは一度もない。

 もしかして、実は命は大丈夫でしたなんて言う嘘であって欲しいと願いながら向かった。




――ピンポン

 震える手で門のところにあるチャイムを鳴らす。

 志穂は·····愛する志穂は自分の意思でこの世を去ってしまったのだ。

 隣で笑っていた志穂の笑顔がずっと忘れられない。


 コロナ禍だし、お金が無いわけじゃないけど、先の事を見据えて、「結婚式は大々的にやる必要は無いからやらなくてイイよ!」なんて、僕のお嫁さんになる予定の志穂は言ったよね。

 でも僕は志穂のウエディング姿が見たいと思っていたので、「結婚式は小さくてイイからチャペルで挙げよう」と提案したのは一年程前の事。

 志穂も本音はウエディングドレスが着たいという想いを抱いていたので、身内だけの式にする案に何とか賛成してくれて、準備は順調に進んでいったはずだった。


 それなのに一体志穂に何があったと言うんだ!?

 実の母って⋯⋯。



 僕達が知り合ったのは大学一年の入学式前に行われたオリエンテーションでの事だった。

 初めての大学生活に胸が高鳴っていると、そこで運命の出会いが待ち受けていた。

 オリエンテーションが始まる前、僕がサークルのブースをまわっていると、1つのブースで目を引く女性に出会う。 

 彼女は笑顔が素敵で話す声もとても優しくて、自己紹介をする中で彼女は僕と同じ学科であることが分かり、僕達は意気投合することに。  

 それが杉村志穂との最初の出会いだった。 

 こうして、その後のオリエンテーション以外でも僕と志穂は良く話をするようになり、どんどん彼女のことが気になりだして、彼女と同じバイトをしたり、一緒に授業に出たり、とにかく僕は彼女に近きたくて学業以外に恋にも一生懸命になっていた。

 そんなある日のこと、僕はとうとう彼女に告白することを決める。

 大学の図書館でたまたまテキストを手にした彼女の姿が目に入り、思い切って話し掛けた。


「志保さん⋯⋯あの、少しお時間、宜しいしょうか?」

「直樹君⋯⋯どうしたの?」

「ああ、いや、えっと、その⋯⋯き、今日もいい天気ですよね」

「え?  あ、はい、そうですね」


 告白する時は緊張して、無駄な世間話をしてしまった事もあった。

 でも、志保さんはそんな意味のない会話でも、ちゃんと相槌を打って付き合ってくれる。

 時間を、僕に与えてくれたんだ。


「⋯⋯あ、あの」

「はい」

「その⋯⋯志保、さん」

「⋯⋯はい」

「――――――――――――っ、じ、実は、オリエンテーションで初めて会った時から、ずっと志保さんのことが好きでした。忘れられないんです、頭から離れないんです、このままじゃ、ストーカーになっちゃうかもってくらいに好きで⋯⋯ああ、いや、僕は一体何を言ってるんだ。ごめんなさい、聞かなかった事に⋯⋯志保さん?」


 口元に手を当てて、笑窪をつくりながら志保さんは照れるように微笑む。

 めちゃくちゃな告白だったけど、そんな告白でも志保さんは笑ってくれる人だったんだ。


「えへへ、いいですよ」

「⋯⋯いい、ですよ?」

「はい、最初はとても面白い人なんだなって思ってましたけど、最近はちょっと違ってたんです。  傍にいてくれると安心できるというか、その、温かくて、優しい気持ちになれて⋯⋯壁がないって言うのかな、一緒にいてとても居心地がいいんですよね、心が落ち着けて、話していて楽しい気持ちになります。  それに、今は一緒にいる時間が私にとってとても大切な時間になっていて、私にとって直樹君が特別な存在だと感じていたんです」


 段々と頬を赤らめていく志保さんを見て、僕の心臓はバクバクと高鳴る。


「そ、それって、つまり」

「……お付き合いしてくださいって意味です」



 それからは、僕達はお互いの時間を合わせてデートを重ね、楽しい大学生活を送ることが出来た。

 こんなにも充実して、楽しい学校生活が送れたのは彼女のお掛けだと言っても良いだろう。

 些細なことで喧嘩することもあったけど、彼女は心が広く、こんな僕のことを何時も許してくれた。

 結婚式を目前にして、彼女とオリエンテーションで出会えたことに、本当に感謝していた。

 そして、これからも、ずっと一緒に過ごそうって⋯⋯。


 

「お、おはようございます、藤倉です」


 志穂の実家に到着して、インターフォン越しに話すと、志穂のお義母さんだけでなく、お義父さんも一緒に門まで出迎えてくれた。


「すまないね、こんなことになって、さ、とりあえず中へ入って下さい」


 近隣の目があるからだろう、直ぐに中へと 案内される。

 和室の客間に案内され、対面するように座布団に座ると、お義父さんとお義母さんが深々と頭を下げた。


「すまないね、も少しで挙式わ控えていたというのに、娘の志穂がこんなことになってしまって⋯⋯一緒に暮らしてたのに何も出来なくて、本当にごめんなさい」


 ずっと泪しているお義母さんに変わり、お義父さんがそう言った。


「あの。頭上げてください! 一体志穂に何があったか説明して貰えますか?」

「先ずは志穂と私達夫婦の関係何だが、私達は志穂の実の親では無いんだ、何か聞いていたかな?」

「いえ、何も知りませんでした」

「すまないな、結婚すると決まってるのに、そんな大事なことも話さなくて、志穂の実 母はシングルで育てていたんだけど、酒癖と男癖が悪く虐待していたらしい」

「虐待!!  志穂が⋯⋯」

「うん、それで小学校入る時から志穂は児童養護施設に預けられていてね、子供を授かることが出来ない私達夫婦が志穂が、四年生になる前に引き取ったんだよ」

「そうだったんですね」

「でだ、ずっと実の母とら連絡何か取って無かったんだがね、どうやら私が志穂が大学生になった報告をお世話になった児童養護施設にしてしまったことが良くなかったようで、ある日志穂は大学の帰りに実母と再会してしまったらしい」

「えっ、大学の帰りに⋯⋯ですか⋯⋯」


 全くそんな事知りもしなかった。

 そういえば、二年の夏頃だっただろうか、お互い学業が忙しくなって、スケジュールが合わなくなったことがあったっけ、実の母との再会も多分その時なのだろう。


「その後、どうやら交流が続いていたようで、どうやら私達も知らなかったんだが、お金をせびられていたようだ」

「お金を⋯⋯」

「どうやら、病気がちで働けないと娘に言ったらしく、最初は一万だったのが、二万と、三万と、徐々に額が増えていってね、最近は毎月二十万振り込んでいたらしいんだ」


 ま、まさか⋯⋯。

 だから、疲れてたのかな、ずっと仕事休めなくて!?


「それでだね、仕事の休日も、休日出勤と言われていたり、残業も増えていたんだが、藤倉くんも耳を疑うだろうが、実は風俗で働いていたんだよ」

「本当何ですか、風俗って」

「本当だよ、志穂の手帳にそう書いてあった、まさかこんなことになってるなんて分からなくて⋯⋯」

 そう言うと志穂の両親は深々と頭を下げた。

「いいえ、そんなに謝らないで下さい、僕が一緒に居ながら、僕ですら、何も気付かなかったんです。  疲れてるのは分かってました、志穂さんから笑顔が消えてたので、でも、こうなるなんて予想出来なくて⋯⋯それに実の母のことも、風俗のことも何も知らなかったんです。  悪いのは僕です⋯⋯」


 僕も深々と頭を下げた。

 


 どうやら、三ヶ月ほど前、志穂は結婚式を挙げる事を実の母にも伝えたらしい。

 すると、志穂にはお金があると思ったのか、志穂の実の母親は、毎月とわ言わず、事ある毎に対してお金をせびる様になったのだという。

 それを知ったのは志穂が亡くなってからだ。

 それから風俗でも働くようになり、追い詰められた志穂はとうとう自宅の、自分の部屋のドアに首を紐で繋ぎ自殺していたのだという。

 発見されたのは翌朝のことで、母が五時過ぎ志穂を起こしに行くともう亡くなっていたのだという。

 ぼくは前の日の夜、志穂と会話して「おやすみ、愛してるよ!」と伝えたのが最後になってしまった。

 あれから、志穂の葬儀はコロナ禍ということもあってか親族のみで執り行われ、埋葬も終わったが、あれから、僕は悲しくて、悔しくて、泪が止まらないでいる。

 幸い、職場の理解があって、今は休ませて貰っている状況なのだが、職場に復帰出来そうに無い。

 どうして僕は半年ほど程前から志穂から笑顔が消えていていることに気付いたのに、人手不足で仕事が忙しいって説明してくれていたのを鵜呑みにしてしまったのだろう。

 たまの休みには美味しいもの食べに連れてってあげたり、温泉に行ったりしたよね。

 暫くすると笑顔が戻って安心したのも束の間、その内らどんなに手を尽くしても志穂に笑顔が戻らなくなっていた。  


「今も仕事大変なの?」

「うん、人が入ると、別の人が辞めちゃうループがあってね·····それで常に人手不足!」

「大変だね、志穂は無理してない!?」

「ま、まぁね·····中々休みが思うように取れないけど、仕事は好きで働いてるし無理なんてしてないよ!  私達に出来ることは前を向いて歩いて行くことだもん、前に進めば必ず未来は明るくなるはず、直樹は生きてね!」


 そう言って一瞬笑ったあの時の笑顔·····。

 悔しい。

 もっと、色々気付いていたら違ったのかな。

 本当は仕事だけでなく実の母の事もかあったから、凄い大変だったんだよね、一緒にいたのに気付いてあげられなくてごめんなさい。

 僕は志穂の墓参りに行き手を合わせている。

 辞めようと思っていた仕事は何とか辞めずに復帰した。


 それは生前彼女がこう言っていた事を思い出したから。「私達に出来ることは前を進んで歩いていくこと、前に進めば必ず未来は明るくなるはず、直樹は生きてね!」

 悔しいけど、僕は彼女が残した思いを胸に、今日も一日一日をいきていくことにした。

 今度出会った時ははずっと一緒にいような!!




 

 最後まで読んで頂きありがとうございます。

 久しぶりに投稿しました。 誤字、脱字を訂正したので読みやすくなっているかと思います。


 好きな人とのお別れは辛いですよね。

 私はまだその経験がありませんが、書かせていだだきました。


 もし、良かったらこれから執筆していく励みになるので、評価もして貰えると嬉しいです。

 

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