桜が舞って
折笠陽視点、回想
まだ堅い制服を着た高校生が、教室や廊下にあふれていた。入学式の緊張が解けたのか、あちこちで笑い声が響いている。少し前に放課になったのだが、みんなスマホ片手におしゃべりをしていて、中々帰ろうとしない。ルカも例にもれず、様々なグループに混じって笑いあっていた。
「そろそろ帰るか…?」
残念ながら、初日から人と楽しく会話する能力を持ち合わせていない私は、先ほどから帰るタイミングをうかがっていた。新しい教科書を確認し終え、やることがなくなっていたのだ。もちろん、誰かに声をかけられるわけでもない。このまま教室に残っても、居心地が悪いだけだろう。もし、帰るなら…
ぐぅ~…キュルル
…今だ。
「ルカー、ごめん先帰るね。」
「あ、うん!ばいばーい!」
一応、ルカに声をかけ、教室を後にする。早足で階段を降り、下駄箱の角を曲がったところだった。
「きゃっ!」
「わっ!」
勢いよく飛び出してきた女子とぶつかってしまった。幸いにも私はバランスを崩しただけだったが、相手の子はよろけて私の方に倒れこんできた。
「…っと、大丈夫ですか?」
「…っ!」
反射で女の子を抱きかかえ、顔を覗き込む。そのせいで動揺したのか、女の子は慌てて立ち上がり、ガバッと頭を下げると、そのまま走り去ってしまった。カバンに車の絵がかかれていたのが少し意外だった。
「あ!…まぁ、走れるなら大丈夫か。」
正直、今は昼ご飯が優先だ。今の出来事を頭から振り払い、玄関の外に出る。入学式にふさわしい良い天気だ。空色のキャンバスに、ほのかなピンクが飛び散っている。澄んだ空気を吸い込んで、私は歩き出した。
…まぁ、そんなこともあるよね?




