澪と呼んで
「ただいま~。あ、スリッパそれ使って。傘はそこに置いてねー。」
「…おじゃまします。」
うさもっちを買ってもらった私は、約束通り荷物持ちを手伝ってあげた。バスに乗り10分、最寄りのバス停から歩いて5分もかからないところに、そいつの家はあった。
「いやー、助かったよ~。ありがとう!」
「別にいいよ。うさもっち、本当に買ってくれたし。」
正直、ちょっと疑っていたのでそれは嬉しかった。満足気な私を見たそいつは、喜んでもらえたなら何より、とほほえみ、両手いっぱいの荷物を大きいソファーへ次々と下ろしていく。私もそれに習って、荷物を下ろしていく。洋服のブランド、化粧品のブランド…一つだけ見たことのないロゴだ。
「ねぇ、この袋どうする?」
「あー…それは俺の部屋に置いてほしい。」
「部屋?…どこ?」
「あ、ごめんごめん。せっかく来てくれたし、案内するよ。」
隙間がなくなったソファーの代わりに、横のサイドテーブルへ最後の袋を置いたそいつは、上の階に上がる。私も後に続くと、一番奥のドアに「Rei Room」の文字が見えた。
「ここが俺の部屋。先に入ってていーよ。俺飲み物とってくる。」
「え?うん、分かった。」
階段を降りていくそいつを背に、私は部屋のドアを開けた。
「おぉー。片付いてるじゃん。」
私は部屋をぐるりと見回した。ドア側の壁に沿って大きな本棚が置かれていて、漫画やラノベっぽい背表紙がきれいに並べられている。続く奥の角に普通のベッド、横に視線をずらすと涼しげな窓、その隣の角が整った勉強机、部屋の中央には小さいテーブル。私は持ってきた袋をそのテーブルに置き、なんとなくその場に正座した。緑っぽい青の壁紙とフローリングの白っぽさが、まるで海の中に閉じ込められたみたいな感覚にさせる。…きれいすぎて落ち着かない。
「ごめん、おまたせ~。お茶しかなかったけど、どーぞ。」
「あ、わざわざありがとう。」
そいつは二つの紙コップにお茶を注ぐと、すかさず自分の分を飲み始めた。私も遠慮なくいただく。
「ぷはぁ~。あぁ~、マジで疲れたわ…。」
そいつはベッドに寄りかかるように座ると大きく伸びをする。このまま放っておくと、眠ってしまいそうだ。私も手伝ったとはいえ荷物は多かったし、相当疲れているのだろう。静かに目を閉じたそいつを私はまじまじと見つめた。傘を貸してくれた時は急すぎて気付かなかったが、容姿は割と整っている。ふわっとした髪に、かわいい雰囲気の顔立ちで、身長がまあまあ高いのに少し華奢だ。優しいことに加えて、誰にでも愛想良く関われる性格は、フツーに女子からの人気が高そうだ。…ルカが二ヤついていたのも分かる。
「あ、そういえば。」
「うわっ!」
急に目を開けたそいつに驚いて声を上げる。そいつは一瞬だけ申し訳なさそうな顔をすると、テーブルに置いてあった袋を開け、中から取り出した文庫本を本棚にしまう。女性ものにしては見たことがないロゴだと思っていたが、書店のものだったらしい。
「自己紹介してなかったよね。まぁ、お互い名前は知ってたけど。」
「え?あー…、確かに。」
「じゃあ、改めて。三組の如月澪です。呼び捨てでいいよー。」
「えっと、二組の折笠陽です。よろしく、れい。」
「ん。よろしくね、はる。」
その後、れいはバス停まで送ると言ってくれたが断り、私は一人帰路についた。…前とは違ってすっきりとした気分で。
キャラクター秘話:陽は私っぽい感じをイメージして、黒髪ロングで身長163cmくらいの女子です。澪は完全に私の好みで、ふわっとした優しくてかわいい系の男子に。これは即決定しました。わかる人にはわかると思います(笑)。瑠花は陽とは性格や雰囲気を逆にしたら、明るくて激かわ女子になりました。




