梅雨に入って
体育祭から一ヶ月ほど経った。いまだに答えを見つけていない問いに頭を悩まされ、梅雨の曇り空に心が重たくなる日々だ。しかし、今日は珍しく朝から晴天で授業中も雨は降っていなかった。…はず。
「え、うそ。」
帰り道の途中、小さな雨粒から始まり徐々に勢いを増してきた。折りたたみ傘は相変わらず持っていない。雨宿りするため、とりあえず近くのコンビニに入る。ビニール傘を買おうと店内に目を向けて、私は唖然とした。
「そ…爽さん?」
「あ、陽ちゃん。久しぶり〜。」
他校の制服を着たその人は、細身で穏やかそうな雰囲気の先輩、神風爽さんだった。
「もしかして帰ってきたんですか?」
「うん。今年こっちに戻ってきたんだ〜。」
爽さんとは元々小・中学校が一緒だったが、三年前に引っ越してしまったのだ。学年は違えど家が近いため仲が良く、引っ越しの時も寂しく思っていた。その爽さんが、まさか戻ってきていたとは。しかも、爽さんが来ている制服の高校は私の高校のすぐ近くだ。
「また爽さんと会えて嬉しいです。引っ越しちゃった時すごく寂しかったので。」
「んふふ、僕もだよ。まだ友達がいなくて一人ぼっちだったから、陽ちゃんに会えて良かった〜。」
ふわっと笑う爽さんがなんだか懐かしい。それにこの爽やかな笑い方、どこかで見たことがあるような…?
「そういえば、陽ちゃんはコンビニに何を買いに来たの?」
「あ、えっと、傘を忘れてしまって。折りたたみ傘も持ってないので、ビニール傘を買いに。」
「あ〜。…陽ちゃんさえよければ僕の傘に入ってく?色々話したいこともあるし。」
「えっ、いいん…ぜひ!」
爽さんと話したいことなら私にもある。というか、ちょうど悩みを相談できる人がいなかったのでとてもありがたい。
爽さんが持っていた紺色の傘を開き、どうぞと私を入れる。私達は歩きながらそれぞれ近況報告をした。




