吸い寄せられて
体育祭当日。グラウンドでは昨日の忙しさが嘘のように、朝から爽やかな声が響いている。
「ついに、きちゃったね~。」
「あ。おはよう、ね…山岸さんとれい。」
「おはよー。…ふわぁ~…。」
「おはよ、はる。今日はお互い頑張ろうね。」
「そうだね。」
眠たそうな猫さんと気合の入ったれいの二人と合流し、本部テントへ向かう。私たち実行委員は何かあったときにすぐ対応するため、応援席には行かないらしい。ルカが一緒に応援できないのを残念がっていたが、こればっかりは仕方がない。
「そうだ。ルカ見えるかな。」
私は、応援席の方に目を走らせるも、さすがに人が多すぎて見えなかった。その代わり、あるものに視線が吸い寄せられた。
「おぉ~…!」
私たちの高校は、赤、青、黄の三軍に分かれて競い合うのだが、競うのは競技だけではない。それぞれの軍がテーマに合わせて描いたパネルや、法被をアレンジして制作された応援団の衣装や、軍ごとにダンスをするときの衣装も得点の一部になる。
私が心を掴まれたのは、応援団が身に着けていた法被だ。赤軍は襟と裾に黒い布が足され、背中の『愛』という筆の文字の周りに雲のような柄がかかれている。青軍は腰のあたりから下の部分に白のチュール素材が縫い付けられていて、そこに付いているビーズがキラキラと光っている。黄軍は袖や裾に小さく花の模様らしきものが刺繡され、所々にリボンがつけられている。どの軍も気合の入った法被だ。
「うわ~!あれはすごいね。」
私が気を取られていたからか、れいも応援席の方を見て感嘆の声をもらした。
「色は違えど最初は同じ法被なのに、軍によってこんなに変わるんだね。」
「うん。…れい、あの赤軍のやつにあってるんじゃない?」
「そういうはるこそ、似合ってるかもね。」
にやにや笑って言うと、れいもにやっとして返してきた。でかでか『愛』と書かれた法被は私には絶対似合わないが、一見クールに見えるれいならギャップの力で本当に似合いそうだ。
「おーい、折笠さんときさらっちー!そろそろ始まるよー!」
猫さんの声が聞こえた後、開会式の隊列に整列するようアナウンスがかかった。
いよいよ、始まる。




