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第12話 ローシャとリオンと取り巻く人々

ローシャには専属の執事もメイドも居たが、最近新たにナターシャがその末席に加わった。

ナターシャはロザリンドから助けられたという恩義を感じて見ている者が微笑ましくなるくらいローシャに熱心に仕えた。

彼等彼女等は恭しくローシャの世話をしたし、なんの不満も不備も出ないよう細心の注意を払って職務に全うしていた。

家庭教師からの評価は上々で、褒められることはあれど叱られたことなぞなかった。

とても優秀で品行方正なローシャを家庭教師も家族も誇らしく思っていたが、ローシャにとってそれは少し重荷になる時があり、それを隠して期待に応える事がローシャの日常だった。

外へ行く際には影から護衛のサシャとカルヤが見守っているし、ローシャが本当の意味で一人で過ごす時間といえば夜に寝る時くらいだった。

だが、貴族とはそういうものだとローシャは己の身分と立場を理解していた。

それが幼少期からの事でローシャにとっては当たり前のことだけれど、たまには一人になりたい時がある。

自室に鍵を掛けた事はないけれど、頼んで付けてもらい掛けてみようかと考えながら日課となった望遠鏡で夜空を眺める。

隣には愛用の地球儀も置いてある。

まだローシャの世界は狭いけれど、いつかはもっと広い世界を見てみたいと思っていた。

この望遠鏡を買って貰う時は久々に両親への頼み事とあって緊張したことを覚えている。

両親はローシャからのわがままを笑って叶えてくれたのがとても嬉しかった。

愛されているという実感が得られた。

望遠鏡で丸い月を眺める。

いつか人類もあの月に辿り着く日は来るのだろうか?

ローシャの願望はリオンには夢見がちで乙女のようだと笑われたが、いつかは手が届くと思うのだ。

今ではない、近くて遠い未来にはきっと。

リオンに乙女と言われようとローシャは信じて今宵も美しい月を眺めて日記を書き記し就寝した。


リオンは飲食物には敏感だった。

過去に毒見係が毒に当たって生死の境を彷徨ったのを目の当たりにしてから他人が自身に出してくる食べ物に拒絶反応を示す時があるが、ローシャと一緒だとローシャがなんとかしてくれると医師より信頼している。

ローシャにとってはいい迷惑だった。

ローシャは後から毒が盛られたのは分かっても解毒は出来ない。

そこは医師を頼って欲しいというのはローシャの弁でありリオンに関わる人々の頼みだ。

その過去のせいか、リオンは味や匂いの変化に敏感だった。

「普通はもっと慎重になるべきだと思うけれどね」

と、ローシャに言われても食べたいものは食べたいのだ。

お忍びで街に行った際に買い食いしたりする事を好んでしていた。

リオンは堅苦しいルールもなく気軽に食べられる庶民の味もとても好きなのだ。

リオンの護衛であるハーベストとアルザはいつだって気が気では無かった。

仕えるリオンが自由に振る舞いすぎるのだ。

ローシャが止めてなんとか控えめになっているが、お目付け役がいないと普通の少年になり無邪気にやりたい事を自由にやる。

ローシャにはそれが羨ましくて眩しく思えた。

「僕は君が羨ましいよ」

とはローシャによく言われるが、リオンは子供のうちは止める気がまったくなかった。

どうせ大人になったら兄の手伝いを本格的にして一生を過ごす事が決まっているのだ。

家庭教師と兄のサポートを少しする程度の今のうちくらいは自由に過ごしたいとリオンは思って遊びに耽っていた。

そしてなにより、親友ローシャの今後を心配して将来を案じてあれこれ世話を焼いていた。

名探偵になればいいと思ったのは、ローシャが人や社会に仕えて自分をこれ以上押し殺すのも駄目だと思ったし、何よりその頭脳を生かすなら探偵がいいと思ったのだ。

事実、数々の謎を解き明かしてきたし、最近は警部の信頼も勝ち得た。

これでローシャがその気になってくれればいいとリオンは考えていたが、肝心のローシャが探偵に興味を持ってくれていないことにヤキモキしていた。

とはいえ、ローシャの人生なのでローシャが本当にやりたい事が出来たら全力で応援しようと決めていた。

それまでは、ひっそりと勝手にローシャに合うと思う探偵を推してローシャが家から出る時に何の不自由もないようにしようと画策していた。

すべてローシャには筒抜けだったが、ローシャはリオンが自分を思ってしている事なので基本的に黙って好きにさせていた。


結局のところ、ローシャとリオンはお互いに思い合って無二の親友としてかけがえのない時間を過ごしているのだった。

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