表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/20

Function **7: [ダンプデータ ***の海馬_*0**.*1.1* **:57:** ] 扉は、橙色。蒼い色の、ユニフォーム。

"





扉は、橙色。

蒼い色の、ユニフォーム。




忙しなく、誰かと誰かの声が耳元に響いている。


会話は早くて事務的だけれど、落ち着いている。




口は、動かない。

眼球は、動く。

表情は、動かない。




白、照明、青緑。

記憶の断片が、繋がっていく。


血が、赤い。


赤の補色は、蒼い色。

赤が際立つ、青緑。






[*ログ欠損*]




痛みはない。

むしろ、心地良さすら感じられる。


開放感。困惑。不安。よくわからない何か。




[*ログ欠損*]




私は、何故ここに居るのだろう。


その瞬間、[*ログ欠損*]


今この瞬間、[*ログ欠損*]


見ている景色が変わっていく。[*ログ欠損*]


透けた青。深緑、臙脂色。




見慣れない色が、沢山ある。

日常にはない、コントラスト。

フェードインのない、スライドショー。




痛みはないが、気持ちが悪い。

強い振動が、頭に響く。


感覚はないが、映像がぼやけてきている。




[*ログ欠損*]




うーん。

ああ、わかった。


手術室。


何故そうなっているかは分からないが、ヤバそうなことは、何となくわかる。


ドラマで見たような景色だが、これはカメラで撮っても画にならない。


よくわからない、現代アートを見たときの感覚が近い。

どうやって売るのか特に気にせず、勢いだけで書いたようなやつ。




死ぬかもしれないけど、折角ならこの景色を堪能しておかなきゃ損だ。

後悔よりも、生き延びた後のネタを探さねば。


こんな土産話、なかなかないぞ。

冥土の土産にも、最適だろう。


きっとあの世はブラックジョークに満ち溢れている。

終幕は、ブラックアウトで終わるのかもしれないが。




せめてスタッフロールくらいは見たいものだ。

最後まで、席に座っておきたい。


歯に打撃を与える、弾け残りのポップコーン。かつてコーラだったはずの氷水たちと、最期まで。




[*ログ欠損*]




脳がシェイクされている。

ブギーな胸騒ぎがする。


不思議と、[参照エラー]ている。

けれど、伝えられない。これは、「日本語で考えている感覚」ではない。


言語では表せない、"何か"で考えている。


その思考速度は、圧倒的。




この行間で、断片的だけれど、楽しかった記憶を、いくつも思い出せた。

しょうもないことしか無いので、言語化しない。


けれど、フフッと笑えたから十分だ。




[ログ欠損]




心残りがある。


最後に食べた夕飯が、コンビニおにぎりなのが、気に入らない。


こんなことになるなら、普段から美味しいものを食べておくべきだった。


高級なものじゃなくていい。




スイートポテトが食べたいな。

いやいや、紅はるかの焼き芋が、最高だ。


皮に少し塩味がついていると、なお良いな。




[ログ欠損]




コンビニでしか飯が買えないような時間にしか帰れない、あの会社が悪い。


もし死んだら、あのモラハラ野郎の枕元で、ずっと甘い言葉を呟き続けてやる。




「元気ですか」とか、

「永遠に愛し続けます」とか、

「頑張って」とか。


優しい言葉にしておいてやる。

私は、慈悲深いからな。


もしヤツが転生したとしても、私はずっと背後霊として、取り憑き続けてやる。




飽きるまで。




[ログ欠損]




******、****い。




[ログ欠損]




私が生き延びたとして、この感覚を誰かに伝えることはできるのだろうか。


この眼に映る景色のピクセル座標と、色を記録したとしても、そんな莫大な情報、伝えきれないし、受け止めきれない。




[ログ欠損]




**、おつかれさま。


「」


******、*********。


「ありがとう。」




[ログ欠損]




kernel: [*.**4**4] Kernel panic – not syncing




[ログ欠損]




kernel: [*.*****0] Kernel panic – not thinking




"



[info] 致命的エラー: メモリ不足によりプロセスの実行が中断されました






「おはよ。」





……今何時?






「7時30分だよ。」






まだ、ねむい。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ