20 救助2
乗馬の訓練は、歩きから軽い走りまで体験して今日は、終了した。短い時間なのにお尻と太腿が痛い。馬舎の脇の藁の塊に大きな鳥が倒れていた。見ると翼に吹き矢のようなものが刺さっている。
御者を呼び、馬を見てくれる薬師を呼んでくれると言うので、藁のそばに水と少しの生肉を用意して、様子を見るとお水は飲んだ。
薬師が吹き矢を抜き、軟膏を塗った。
「お嬢様、これぐらいしか私には出来ません。毒などは、吹き矢に塗られていなかったようですが、痺れ薬は、塗られていたようです」
「いえ、ありがとうございます」
薬師にお礼を言って別れ、御者には籠に藁を敷き鳥を一緒に移してもらった。その際に手の甲が、鳥の爪で引っ掻き傷を負って私も手当てをされた。
籠ごと屋敷に戻るとやはりお父様と執事だった。執事に挨拶をして自室に戻る。
部屋が少し楽しくなった。動物を飼った事がなかったので、気になって何回も籠を見に行く。メイドのリマにも呆れられた。
「お嬢様、そんなに気になるなら、鳥籠の側に椅子を置いたらどうでしょうか?」
「いつ起きるかわからないし、起きたら、野生の鳥だから窓を開けて森や山に帰るでしょう?部屋に閉じ込めたら可哀想だもの」
「お嬢様、伯爵様もお戻りになられていますし、聞きにいかなくていいのですか?」
「何を?」
「川で倒れていた人ですよ」
「あぁ、ご無事で何よりね。もうお話出来ているのかしら?お父様とお祖父様がお調べになるでしょう、任せて後で報告を聞きましょう」
私にはどうすることもできない。柔らかくするだけだし。
籠をもう少し大きく引き伸ばした方がいいかしら?
近づくと大きな鳥と目が合う。
逃げてしまうか?窓を開けるべきか?
本人に聞いてみるか?
「すいません、窓開けて、森に帰ります?」
「ヴルフゥー」
なんて言ったのかな。わからないや。とりあえず、羽を動かしてないようなので、
「リマ、先程のお肉のお皿を持って来て」
リマが恐る恐る肉の皿を出す。大きな鳥は、肉を食べた。籠がやはり狭そうなので、拡げることにした。魔法が役に立ったのですごく嬉しい。
飼い主になった気分だ。
そんな遊びをしていると夕食の時間になり呼び出された。大きな鳥に
「私は、部屋から出て行きます。帰りたかったら窓を開けておくので帰っていいですよ」
と言ったが返事はなかった。
少し寂しい。
食堂には、お父様やお祖父様、お祖母様が揃っていた。
「遅れてすいません」
と言って席に着いた。食事をいただきながら、お父様が、今日あった事を話した。
やはり、川で倒れた人は、ガルバン共和国の人で北部の町で捕らえられたガルバン共和国の村人の村を治めている伯爵令息であることがわかった。
いきなり襲われたらしく村人と同じように、山に逃げて川沿いを当てもなく歩いていたらしいと。
お父様は、一度その方と村人を王都に連れて行き、王宮の外政官にお願いするとのことだった。
外国の争いは、伯爵家でどうにかなる訳でもないし、まして戦争が起きる前兆なら、ちゃんとしたところを通していかないといけない。
「ルイーゼは鳥を拾ったんだったな」
「はい、お父様、吹き矢が翼に刺さって馬舎の藁にいた鳥です。薬師が吹き矢を抜いて軟膏を塗ってくれて、先程お肉を食べました。窓を開けて来たのでもう森に帰ってしまったかもしれないです」
「可愛いかい?」
「かっこいいですよ」
「まだいるかな?いるなら見たいな」
とお父様が言った。私は大きく頷き、
「いればいいですね」
と言った。
部屋に戻ると大きな鳥はいなかった。籠には数本の羽が残されていた。その羽はピーンとしてとてもかっこ良かった。お父様にも渡して
「会いたかったな」
と言われるほどかっこいい羽だった。
飼い主じゃないのに褒められた気持ちになって嬉しかった。
籠を元に戻しリマに渡した。夜の外は、鳥の鳴き声が聞こえた。
お父様達は、朝食を食べてから、馬車で王都に向かう。
「来週には、王都に戻りますね」
と言って別れた。私は、今日も乗馬の訓練です。
御者と二人三脚と言ってもいいほど、お世話になっている。早歩きまで出来るようになって、本日は、お疲れ様でした。
「リマ、乗馬できるようになってきたわ。進歩がわかるって楽しいわ」
と話してると
「トントン」
窓を叩く音がする。リマがカーテンを開けると、昨日の大きな鳥が戻ってきた。
「凄いわ、リマ。帰ってきたわ」
すぐに部屋に招き入れる。
水とお肉の用意を頼み、籠を片付けたことを後悔した。
「凄いわ鳥さん、帰ってきてくれるなんて、嬉しいわ」
と言って背中を撫でた。昨日も感じたが大人しい鳥だ顔つきはかっこいい。撫でていると、足に紙が巻き付いてある。
「何かしら?」
鳥の足から紙を取る。
「バードの治療感謝します」
と書いてあった。あなたには、飼い主がいたのね。そして戻ったのね。
「バード、翼は痛くないの?飛んで大丈夫なの?」
と言えば、
「ヴルフゥー」
と言われた。大丈夫って事かしら?リマが戻って水とお肉をバードは食べた。
私もお返事を書いた。
「感謝を受け取りました。お気遣いしないでください」
バードは手紙を巻きつけると外に出て綺麗に旋回を見せてくれて飛んでいった。
「リマ、行ってしまったわ。バードは飼われていたのね」
「戻ってくるなんて賢い鳥ですね」
「本当に賢いわ。ちゃんと手当てのお礼を言いに来てくれたんですもの。あんなに立派に飛べる姿を見れたわ」
次の日乗馬の練習の際に御者にも伝えた。飼われていたのも驚いて再度戻ってきた話にまた驚いた。お祖父様に話せば、連絡手段として鍛練していた鳥だったんだねと言われた。
お祖母様とはお茶会の時、鳥も飼ってみたいと言ったら、そんな賢い鳥なら飼いたいわ、とお祖母様も言った。トルネス公爵領でのお茶会の事を報告した時は、お祖母様は、頭を撫でてくれた。それだけで私は、泣きそうになった。バードの羽は、栞にしている。本を読むのが楽しみだ。そうこうしていると2週間は終わり、今日王都に戻る。朝から乗馬をして、領主館を周り最後確認した。
「お祖父様、お祖母様、ありがとうございました。とても充実した休みで、私自身を沢山見直しました、頑張っていけそうです」
と言うと、二人とも優しい顔で手を振ってくれた。
そして私はマリノティオ領を後にして王都に向かう。
途中トルネス領で昼食を取り、真っ直ぐ王都に、そして、
「お母様、ジョーゼルただいま」
戻ってきた。




