冬休み-2
「ん…っジア」
「あ…んっアーニー。待って」
3学期が始まるのでアーノルドの屋敷から帰る前夜、久しぶりに夜中にアーノルドがフリージアの部屋を訪れた。
いつもの合図でアーノルドだと分かっているものの、ドアを開けた瞬間に抱き締められたフリージアは、離れようともがく。
「ジアっジア! 明日で帰ってしまうなんて寂しすぎるよ。同じ屋根の下に君がいるだけで、私がどれだけ頑張れるか。今回は母上に厳しく言われて、部屋にもなかなか来れなかったし…」
「アーニー。あなたが頑張ってるのは知ってるわ。どうか落ち着いて」
強く抱き締められ頭を擦り付けながら話すので、最後の言葉が聞き取れない。
フリージアはアーノルドの手を引きベッドに座る。引かれたアーノルドは素直にフリージアの隣に座ったかと思うと、そのまま横に倒れこみ、膝枕の状態で頬をフリージアの腿に擦り寄せる。
「ジア。かわいい、僕だけのジア」
フリージアはさらさらとしたアーノルドの長い髪を優しく撫でながら、どう話そうか困っていた。
屋敷滞在の最終日に、自分の気持ちをアーノルドに話そうと、やっと決心したのだ。
いまだにアーノルドの変化の理由が分からない。
幸せそうに整った顔を自分の膝に擦り寄せる婚約者。まるで私のことを好きみたい…だけど
決心が鈍る前に
「アーニー。聞いてほしいの」
フリージアは声をかけた。
「すぅーはぁーすぅーはぁー」
アーノルドはフリージアの腹に顔を埋め、フリージアの香りを堪能している。
「もう! アーニー、聞いてほしいの。もうすぐ3学期が始まるけど、もし学園であなたの言う、運命の出会いが会ったのなら、…どうか正直に話してほしいの。私、ちゃんと受け止めるから」
「フリージア? なに?ごめん。ちょっと眠くて。少しだけこのまま…」すぅー
まさか、せっかく勇気を出して言葉にし、アーノルドの答えを受け入れるつもりだったのに、寝てしまうとは。
しかもフリージアの膝の上で。
よく見ると、本当に疲れてるみたい
目の下にうっすらと隈があるわ
さらさらとした髪の毛を撫でながら、フリージアは息をはいた。
長く一緒にいる分、こうやって素の部分もたくさん見せてくれたわよね。
いつまで側にいてくれるのかしら。
こうして結局端から見ればラブラブな婚約者のまま、フリージアにとってはもやもやしたまま、冬休みは終わった。
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「金の目の王子が覗くのは令嬢の妄想」
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