冬休み
学園の二学期も終わり、冬休み。
フリージアはアーノルドの屋敷に花嫁修業として長期滞在することになった。
昼間はアーノルドの母について、侯爵家の仕事を手伝ったり、小規模ながらお茶会の主催者を体験したり。
時にはアーノルドとダンスの練習をして過ごすこともあった。
フリージアに宣言した通り、学園ではもちろんのこと、休日も以前より忙しく過ごすようになったアーノルドだが、フリージアが屋敷に滞在中はかなり一緒に過ごす時間が増えた。
とても幸せな時間だと感じるときもあれば、ふと、心に穴が開いたように感じるときもある。
やはり両親の目があるからかしら…
フリージアは夜、あてがわれた部屋でため息をつく。
先ほど聞いてしまったのだ。
アーノルドの両親が話していたことを。
『成人まであと2年ほどだけど、そろそろ二人の関係に決着をつけないとね。はっきりしたほうがお互いのためだと思うし』
『まぁ、アーノルドは…困ったものだ。フリージアさんには申し訳ないな』
決して盗み聞きするつもりはなかったが、昼間借りた本の続きを借りに屋敷の図書室へ向かっているときに、サロンの戸が少しだけ開いていたのだ。
やっぱり、アーニーは…
フリージアの胸が痛む。
少し前なら、フリージアが屋敷に滞在するときには夜中に部屋に忍び込んで、フリージアを驚かせることもあったアーノルドだが、今回の滞在中は自室に籠り、訪れることが少なかった。
フリージアから訪ねれば邪険にすることなく、喜んで部屋に入れてくれるが、机の上に山積みになった本を見ると、なにか踏み込んで邪魔をしてはいけないような、後ろめたい気持ちになってしまうので、二回ほど通ってやめてしまった。
「あんなに重い愛で…あの子もバランスって言葉を知らないのかしら。フリージアちゃん、せっかく来てくれたのにごめんなさいね」
アーノルドの母とお茶をしているとき、不意に話しかけられたフリージアだが、昨夜聞いたことでぼーっとしていて最初の言葉を聞き逃してしまった。
「え? いえ。アーノルド様はお忙しくしていらっしゃるし、私も出来る限りのことをしたいと思ってます」
「ふふ。アーノルドにはもったいないほどの子ね。本当に嫁いできてほしいけど。でも無理せず学園生活は最後までしっかり楽しむのよ」
「ありがとうございます」
ごめんなさい、お義母様。
私も嫁いできたいけど、アーノルド様の決めたことを応援するつもりです…
それが、どんな道でも。
フリージアはテーブルの下で手を握りしめる。
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「金の目の王子が覗くのは令嬢の妄想」
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