二学期-3
「最近元気がないように見えるのですが」
ランチタイムにカレンが心配そうにフリージアを覗きこむ。
「いえ。そんなこと…」
「フリージア、私でよければ相談してね。アーノルド様がいるとはいえ、女同士の方が話しやすいこともあるでしょ」
「カレン、ありがとう」
心配かけまいと笑顔で返すものの、ぎこちなくなってしまったフリージアに、カレンがそっと手を握ってくれる。
フリージアは、思った以上に落ち込んでいる自分自身に驚いていた。
相変わらずアーノルドとは、朝晩の通学は一緒に馬車に乗り、他愛もないことを話す。
時には馬車の中で、人前では出来ない恋人のような触れ合いをすることもある。
それでも
ずっと一緒にいたアーノルドと、ほんの少し会う時間が減っただけで…
思わず涙ぐみそうになり、目に力を入れ顔をあげると
「フリージア!」
会いたかったような、そうでなかったような。
焦ったような顔でアーノルドが走ってきた。
「アーニー…」
思わず二人だけの時の愛称を呟いてしまう。
すぐにカレンからフリージアの手を奪い、フリージアの様子がおかしいことに気づく。
「どうしたの? フリージア。経済クラスで質問が長引いて、お昼間に合わなくてごめんね? だからって私以外の手をとらなくとも…もしかして、寂しかった?」
フリージアの手を奪われムッとしつつも、同じくフリージアが心配なカレンは、聞き耳だけたて、横でデザートのフルーツを食べている。
「大丈夫ですよ、アーノルド様。でもお顔が見られて嬉し…っ」
フリージアが人前で素直に気持ちを言うことは滅多にない。
アーノルドは、恥ずかしがりながら潤んだ瞳で伝えようとするフリージアの言葉を最後まで言わせず、思わず腕のなかに囲ってしまった。
「アーニー」
アーノルドのことは初めて会った時から好きだった。
成長するにつれて可愛らしい男の子だったアーノルドは甘いマスクの背の高い男の人になった。自分だけが知っているアーノルドは、今ではみんなの憧れのアーノルドだ。
整った顔ながら親しみやすい気さくな雰囲気で、授業のあとはクラスメイトに質問されたり、テスト前に勉強会を開いたり。
きっと頼りになって格好いい彼のことを、好きになる女の子はいるんだろう。
そんな忙しいなかでも、フリージアとの時間をいつも大切にしてくれた。
フリージアにとっては、今もとても大切で大好きなアーノルド。
もし彼が離れることを望むなら、彼のために、叶える覚悟も持たなくちゃ。
実際には周りから見たら、ラブラブで付け入る隙のない二人なのだが、フリージアには分からない。
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「金の目の王子が覗くのは令嬢の妄想」
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