一学期
今日も朝から婚約者のアーノルドが教室まで送ってくれる。
「おはようございます。フリージア、アーノルド様」
「おはよう! カレン」
「おはよう、ベイリー嬢。今日もフリージアをよろしく頼むよ」
「ふふっ。クレイ様、お任せくださいませ」
入学して3ヶ月、同じ淑女クラスで仲良くなった伯爵家のカレンが、私達を見つけて挨拶してくれた。
カレンは私に一目惚れをしたと冗談を言うような、明るい女の子だ。
最初のうちは、アーノルドがいると緊張していたようだけど、今ではすっかり打ち解けてくれている。
「では、またあとで」
なぜかいつもアーノルドからカレンに手渡されるような形になるのだが、彼は私がカレンの横に収まるのを確認するまで手を離さない。
いつものようにカレンが横に来ると、髪をすくい口づけして、去っていった。
「フリージア、ほんとに愛されてるわね」
「もう昔からの癖みたいなものじゃないかしら」
「普通は長く一緒にいたら落ち着いてきそうなのに、独占欲といい愛情表現といい。そこまで愛されることが羨ましいような逃げ出したくなりそうな…。あっ! もちろん、アーノルド様に私はそんな想いは抱いてないわよ!」
「ふふっ分かってるわ。カレンの想い人だって知ってるし」
「そうだったわね」
学園での生活はとても楽しい。
家庭教師に基礎を学び合格点はもらっていたが、新しい友人とより高いレベルを目指したり、将来アーノルドの手助けができるよう最新の法律を覚えたり、やりがいもある。
そしてアーノルドはもともと優秀ではあるが、騎士クラスで体を鍛えることで、すっかり文武両道の在校生憧れの的となってしまった。
私が頑張っても頑張っても追い付けず、その距離を考えると近ごろ胸がチクリとする。
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「金の目の王子が覗くのは令嬢の妄想」
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