番外編…カレンの恋 下
ノエルは本当に優勝者との戦いに勝って、私のもとへ戻ってきた。
講師なら、騎士科の中でせっかく優勝した男子生徒に花を持たせてもいいんじゃないかとも思ったけど、ノエルと戦って負けたはずの優勝者は、なぜだか嬉しそうだ。
ノエルの戦い方は、騎士団に所属しているだけあって、戦い方も無駄がなく、しなやかで美しいと感じ思わずドキドキしてしまった。
「さぁ、女神。お名前を」
「カ、カレンですわ。カレン・ベイリー」
「あぁ、ベイリー伯爵のご令嬢でしたか。お友だちはソル侯爵令嬢ですね。アーノルドの婚約者の」
「えぇ。そうよ。カレン、ドッツ先生といつの間に知り合っていたの?」
私が男性と話すのが珍しかったようで、フリージアが大きな目をキラキラさせて見つめてくる。か、かわいい。
「それは、さっき「先ほど、私とベイリー令嬢は運命の出会いをしました」
食いぎみにノエルが答えてしまう。
「ま、まぁそうでしたの…」
ノエルに若干引き気味のカレンにフォローしたいけど、私も発された言葉に混乱して固まってしまう。
ウンメイノデアイ??
「ジア、お待たせ。行こう?」
そこにフリージアの婚約者のアーノルドが、フリージアと早く二人きりになりたいと誘うものだから
「では、ベイリー嬢は私が送りましょう」
なぜかノエルにエスコートされることになった私。
さっきのはなんだったのかと問いただしたかったけど、意外にもノエルはとても話上手で、馬車停めまであっという間だった。
「あなたに一目惚れしてしまいました。どうか私の気持ちを受け入れてはくれませんか?」
あとは馬車に乗るだけと言うところで、突然の告白。
正直こんなことは初めてで、とてもドキドキする。
そんな私の答えは
「無理です!一目惚れとか信用できません!」
一択だったけど。
私がもしフリージアのように可愛らしく素直な令嬢だったら…
一瞬よぎった負の感情に蓋をして、その日の記憶は消すことにした。
ところが諦めたと思っていたら、次の週から花が家に届くようになり、校庭や学園の食堂で偶然会うようになり。
会えば気が合うのかなんとなく話が弾んじゃうんだけど…
ぼんやりとノエルのことを考えていたら、ある日フリージアに指摘されたの。
好きな人ができたのねって。
すっとモヤモヤしてたものに答えがでた気持ちだったわ。
さすがフリージアね。
でも私はまだ自分のやりたいことが決まっていない。こんな状態で人を好きになっていいのかしら。正直自分に自信もないし。
それに最初の告白以来、ノエルから付き合いを迫るようなことは言われていない。
いつの間にか、二人で食事にいくくらいには仲良くはなっていたけれど。
彼は私の気持ちが追い付くのを待っていてくれるのだということを、フリージアの婚約者経由で聞いた。最初は一目惚れの軽い気持ちだったけど、今ではこんな私自身に惚れてくれているらしい。
騎士クラスで飲みに行ったときに、そっと語っていたんだそう。
だから私は決めたの。
淑女クラスで進級して、王宮の女官を目指そうと。そして自分に自信をもってから、今度は私が彼に告白しようって。
歳が離れているし、そんなに待ってくれるかは分からない。
でも、自分に自信のないまま彼の好意に縋りたくはなかった。
あれから3年。
今日は私とノエルの結婚式。
ノエルは平民から騎士爵を得て、今では騎士団の分隊長として頑張っている。
私も王宮の女官としてキャリアを始めたばかり。
だから、今幸せそうに参列してくれている、すっかりお腹が大きくなったフリージア達のようなゆっくりした生活には遠いけど、私は私なりの幸せな家庭を築こうと思うわ。
私はフリージアのようにはなれないけれど、ノエルはそんな私が好きっていってくれるし。
フリージアに出会ってから、私は少し自分のことが好きになれたし、心から愛する人に出会えた。
「おめでとう! カレン!」
「ありがとう!フリージア。本当にあなたに会えてよかったわ!」
思わず抱きついてしまい、ノエルとアーノルド様に慌てて剥がされたのは、いつまでも残る幸せな思い出。
お読みいただきありがとうございました!
これにて完結です。
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また次の作品でお会いできることを願ってます。




