運命とは-2
学園が休日なので、朝から侍女と護衛をつれて買い物に出掛ける。
宝石やドレスなどの高価なものは、侯爵家お抱えの商人達が定期的に屋敷まで見せに来るが、私が個人で買いたいものは供の者をつければ自由にさせてくれるのが、両親の方針だ。
決して放任主義ではなく、自分の行動に責任をもって生きていけるよう、若いうちに色々な経験を積みなさいと日々言われている。
まぁ、マナーの完璧な侍女や護衛がいるので本当の意味で困ることはないけれど。
それに…
「おや! フリージアじゃないか! この広い街の通りで出会うなんて! 午後からの君への訪問のために、近くの花屋へ来てみれば。 これは運め…「アーノルド様ごきげんよう。こんな偶然があるんですね。ですが、今たくさん話してしまっては、午後の楽しみが無くなってしまいますわ。準備までの時間も大切にしたいんです。では、またあとで」
満面の笑みでペタペタと私の顔や頭を触って来るのが恥ずかしく、つい言葉を遮ってしまいました。
だってここ、街の商店街の通りですわよ?
今日もキラッキラの甘いマスクを向けてくださったので、近くを通る女性たちから黄色い悲鳴が上がりました。
この間お互いの供は、いつものことだと静かにそばで控えている。
「私としてはせっかくだからこのまま一緒に過ごしてもいいんだが…」
「アーノルド様をおもてなししたいんです。デートは改めて約束してからいたしますから。ね?」
「わかったよ。では約束の時間に訪問するとしよう。それまでの時間も楽しみに過ごすよ」
最後までどこかしら私に触りながら、笑顔で去っていった。
まさか今日も会うなんて。
さ、私も急いで支度しなきゃ!
午後からのアーノルドの訪問に備えて、彼の好きなアップルパイを焼くために材料を買い出しに来たのだ。
ここで合流してしまっては、サプライズができないではないか。
あぶないあぶない。
運命の出会いも考えものね。
その後、約束の時間に屋敷に来たアーノルドに、サプライズで手作りのアップルパイを出したらとっても喜んでくれた。
帰り際には、お礼に何か贈りたいからと、しっかりデートの約束もさせられたし。
私だって人前でなければ、婚約者として仲良くしたいと思っているのよ。
読んでくださりありがとうございます。
お気持ち程度に評価ボタン押していただけると嬉しいです。
お時間ありましたら、こちらもよろしくお願いいたします。
「金の目の王子が覗くのは令嬢の妄想」
https://ncode.syosetu.com/n6662gq/