婚約者が運命の恋を仕掛けてきます
「今年から不定期にだが講師を勤めることになったアーノルド・クレイだ。よろしく。といっても、みんな知ってると思うけど」
「「「えぇーー!!」」」
新学期、法律の上級クラス一回目で挨拶に来た講師を見て、皆が驚いた。
これは昨年編入生を見たときに思いついたことだ。
編入生になれないなら、先生としてこのクラスに来たらいい!と。
家庭教師から法律の分野は完璧に学んでいたアーノルドは、そもそも聴講生として学ぶ必要がなかった。
それならば飛び級と講師の試験を一気に受けて、先生として教室に現れたら、運命の出会いになるんじゃないかと。
さすがに最新の法律の解釈などを復習しなおし、人に教える時の手順なども新たに学ばなければいけなかったので、優秀なアーノルドでも時間はとられたが、概ね計画通りだ。
ふふっ驚いた顔も可愛いな。
フリージアは大きな目をアーノルドに向けたまま固まっている。
今となってはフリージアが自分に恋してくれてるとわかっているので、もう運命の出会いは必要ないのだが、新たな関係で見るのも刺激があっていいのかもしれない。
授業も問題なく終え、二人で帰りの馬車に乗る。
「アーノルドの役に立つために学んでるのに」と、拗ねるフリージアが可愛くてたまらないが「フリージアも頼るつもりだから、このまま一緒に頑張ろうね」と慰めれば、花が咲いたように笑顔になる。
あぁ、このまま押し倒したい。
講師と生徒が婚約者という関係はどうなんだとも思うが、この学園にはそもそも偏差値や内申点なんていうものはない。
みな自分のために学びに来ているので、サボって試験に落ちるのも、ずるして試験に受かるのも、すべては自分に返ってくるのだ。
成績がよいからと就職に有利になることもない。仮に誰かの成績を贔屓して試験で採点したとしても、将来困るのは本人。
実に合理的な考えが根付いている。
卒業まであと一年。長いような短いような。
経済クラスと騎士クラスはそのまま上級に進み生徒として学んでいるので、恋人として学園でランチすることもまだまだ楽しめそうだ。
「アーニーのために私にももっと他に出来る事はないかしら」と、隣で呟く彼女に
「あるよ」と笑顔で答えるアーノルド。
君にしかできないことをね。
もう彼女の身体で知らないところはないくらい、愛を重ねてきた。
見えないところにわたしの印をたくさんつけて、すやすやと眠る彼女をそっと抱き寄せる。
愛しい彼女の髪をすくい、そっと口づけを落としてから苦笑する。
こんなに分かりやすく伝えてきたはずなのに、私から離れられると思っていたなんて…
これからもっとわからせてあげないとね。
-おわり-
ここまでお読みくださり、本当にありがとうございます!
これにて本編は完結です。
番外編として、友人カレンの恋愛とその後の二人をちょこっと書く予定です。
もしよければもう少しお付き合いください。
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「金の目の王子が覗くのは令嬢の妄想」
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