春休み-2
カレンと会った日から3日後。
アーノルドと約束していたフリージアは、クレイ家を訪れた。
アーノルドの屋敷の者達は、フリージアの事を5歳の時から知っていて、アーノルドがぞっこんなこともバレている。皆、美しく優しく成長したフリージアが嫁いでくることを、とても楽しみにしているのだ。
部屋に案内され、いつものようにソファに横に並んで座る。
5歳の頃から二人きりの時だけは、ここが定位置なので、フリージアは疑問に思っていない。
本来は婚約者といえど基本は向かい合って座るのだが。
お茶やお菓子を入れてくれた侍女が部屋を出るのを待って、フリージアは話す覚悟を決めた。
「アーニー。私ね、ずっと貴方のことが、その、、好きだったの。小さな頃に出会ってすぐ婚約しちゃったから、今まで言う機会がなかったけど」
「…ジア!ぼくは」
「聞いて! でもね、私達、婚約が先になっちゃったでしょう? 私は、会ったときからあなたに恋してしまったけど。今まで婚約者としてずっと優しくしてくれて、ありがとう。貴方はとっても大切な人よ。だから、アーニーがもし、婚約がなかったとしたら…本当は誰を好きなのか…誰を好きになっても。私はアーニーには十分よくしてもらったから、アーニーの気持ちを応援したいと思うの」
「!?」
「私はアーニーが大好きだけど、結婚まであと1年しかないし、変更するなら早い方がおたがい…っきゃ!」
「何を、何を言ってるの? ジア」
フリージアが最後まで言うのを待たず、アーノルドがフリージアをソファに押し倒した。
見たことないほどに顔がこわばっている。
両手でフリージアの手首をソファに押し付けて、まっすぐな瞳でフリージアの気持ちを探ろうと見つめる。
美形って無表情だと少し怖いのね。
初めて本当に怒ってるところをみたわ。
「ア、アーニー? どうしたの? 私はアーニーのことが大切だから」
「大切だから私から離れようとするの? 婚約の変更って何? ジアは他の男と結婚する気?」
その傷ついたような声に、フリージアははっとする。
「まさか!私はアーニー以外は考えられないわ。アーニーが大好きよ!…ただ、学園に入ってからあまり会えない日もあったし、アーニーの好きな運命の出会い?とかもしかしたらあるのかと…」
「…はぁ」
どさっと力を抜いてアーノルドがフリージアに覆い被さる。
「フリージア。覚えておいて。私はフリージアしかいらない。5歳で初めて会ったときから、君が好きだよ。婚約も結婚も、私の希望だ。むしろ気持ちを確認しなきゃいけないのは、本当は…私の方だ」
最後は自信がなさそうに呟く。
「そうなの?私もずっとアーニーだけよ」
「ジア、君にはずっと私の気持ちを伝えてきたつもりだったけど…まだまだ足りないようだね。ジアも会ったときから恋してくれてると言われて、今私がどんなに嬉しいか。さぁ、こっちにおいで。両思いの恋人として、婚約者として、思う存分私の気持ちを伝えてあげるよ」
先程のような手首の拘束とは違うが、同じく振りほどけそうもない甘い優しい手にからめとられる。
「…!」
それから2日。フリージアはアーノルドの屋敷に滞在することになった。
3日後にフリージアの父、ソル侯爵が迎えに来て、このまま新学期まで、と引き留めるアーノルドから引き剥がして帰っていった。
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「金の目の王子が覗くのは令嬢の妄想」
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