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04、ケンちゃんはマイペースなきつねです-08
会計をしようとすると、店員が「さっき、お二人の分もいただいていますよ」と言う。東堂が支払ってくれていたのだ。
路上に出たケンちゃんが、かなり申し訳なさそうな表情になる。
「昨日の夜も色々と頼んでくれたんですよ、東堂さん」
「そういえば、わたしが帰ってからも」
「朝まで店にいてくれました」
ということは、東堂はケンちゃんのうどん屋で夜明かししたということになる。タフな人だなあ……と感心すると同時、よっぽど彼は“あの空間”を、気にいったんだなあと思う。
「このランチ代のことだったら、あんまり気にしなくていいと思うよ。少なくとも、ケンちゃんは」
「そうですかね」
「わたしなら、明日は会社で会うから。立て替えてもらった体で、払えるもの。そっちは、甘えていてもいいのよ。次に東堂くんがうどん屋に行ったら、サービスしてあげたらいいことじゃない」
「そっかあ」
ようやく、くつろいだ感じになった。やっぱり、この子は笑っているほうがいい。