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04、ケンちゃんはマイペースなきつねです-04

 口に運ぶコーヒーも、これまた美味しい。昨夜からの出来事が良いことも悪いことも全部、いい方向に報われそうな気がしてくる。

 日々のルーティンワークの隙間に、こういうブレイクタイムも必要なのねえ。ズル休みしちゃったわたしが、言う言葉ではないけれど。

 ケーキ皿を下げてくれたウエイトレスに礼を言った直後、テーブルに置いていたスマートフォンがぶるぶると震えた。

 東堂からショートメールが来ている。今から会社を出るとだけ、書いてあった。彼が来るまで、もうちょっとゆっくりしよう。

「にしむら珈琲店にいるよー。そこで待ってる」

 それだけ返信して、あとは窓の外を見ていた。広い通りに面したここは、行きかう人の姿がよく見える。

 十分くらい、ぼーっとしていただろうか。ふたたび、スマートフォンが振動していることに気づく。今度はショートメールではなくて、電話だ。パネルは東堂の名前を表している。

 わたしは言った。

「ごめんね東堂くん。すぐに電話、取れなくて」

「いいよ、別に。もうすぐ着くから、茉莉ちゃんは外に出ていてくれる?」

「はーい」

 向こうから電話が切れる。言われた通り、店を出たところにいた。ほどなくしてシャツ姿の東堂が、アーケード左側からひょっこりと姿を見せた。わたしに気づくと、満面の笑みを浮かべて片手を振った。

「茉莉ちゃん、待たせてごめん」

「だって仕事だもの。それよりも、そっちの業務全般、片付いたの」

「それなんだけど」

 東堂はハンカチで額の汗を拭いた。整った眉が、ほんの少しひそめられる。

「保守チームが全力でネット復旧に当たっているけど、どうも本日中のシステム運用は無理みたいだ。だから俺たち中間管理職は、明日(あした)から月末まで残業決定。それが一番の痛手かなあ、個人的に言えば」

「東堂くん、それでなくても『係長』仕事量が多いのに? 無理しちゃ、だめだよ……」

 もしも、明日から月末までの間に東堂から残業を頼まれたら。そのときは、断らないで仕事をしよう。同期なんだもんね、手伝ってあげたいなって思うのは当然だよね。




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