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04、ケンちゃんはマイペースなきつねです-03

 ……神戸発祥の、にしむら珈琲店。

 ケーキめっちゃおいしいです!

 ちいさなケーキの脇に沿ったセロファンを剥がすと、スポンジ生地のふわっとした香りが漂う。ケーキの上には品よく置かれた苺やラズベリーなどなど。それらを口へ運ぶのが、もったいないくらいの贅沢に感じられる。

 店内の照明のせいもあってか、たかだか五、六センチほどの正方形のケーキが宝石みたいに見えてきた。

 スポンジ生地と生地の間にも生クリームが仕込まれている。クリームの中にも細かく刻まれた苺やキウイ、オレンジが入っていた。

 そうっとフォークを入れる。なるべく、かたちを崩さないように。

 こんなに上質のお店、慣れていないから……緊張しちゃうなあ。

 さりげなく周囲に目線を流す。テーブルに付いている皆さんは、全員が紳士淑女に見えてきて仕方がない。わたし以外の誰もが、ゆったりとお茶を愉しんでいる。

 たかがケーキ、されどケーキ。しかも、結構な有名喫茶店のケーキ。どれだけこだわっているんだ自分は。

 だけど、こういうスイーツだからこそ、ちょっとした仕草で自身の品のなさを周りの人たちに露呈してしまいそうに思いませんか。自意識過剰ですか、そうですか。

 ケーキセットひとつ注文しただけで、どれだけ考え込んでいるのよ。わたしって、変ですね。

 開き直って、いつもの自分のままでケーキを口に運ぶことにした。口の中に入れた瞬間、軽やかな甘みが広がった。

 ああん、やっぱりパチンコ屋で東堂くんを待ってなくてよかったよぅ……ふわふわと舌の上でとろけるスポンジ生地を味わう。

 体や頭のそこかしこにあった緊張が、ほぐれていく。

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