03、きつねたちのいたずら-05
様々な飲食店が入っているビルとビルの間、お初天神境内への入り口がある。ここから振り向けば、アーケードが縦に伸びているのがあらためて分かる。高い屋根の下方、びっしりと詰まっている飲食店の並びが、お初天神通り商店街と呼ばれるところだ。所々に縦横へと大通りに抜ける道があっても、そこもまた飲食店や雑居ビルが隙間なく立っている。
昼間は、さすがに歩きやすいけれど。夜は平日であっても、行きかう大勢の人の流れに足を止められることはしょっちゅうだ。
「ランチタイムくらいしか、この通りに来ないもんねえ」
わたしの職場があるビルは、お初天神南側出口から近いところにある。梅田新道の交差点を渡ってから、少しだけ歩く。
本日の自分。上司に勧められたこともあり、調子に乗って欠勤をしてしまいました。あんまり反省はしていません。
だっていつも使っている通勤経路をしみじみと観察することって、めったにない機会じゃないですか。
わたしの耳元では、さっきからずっと幼い子供たちが笑いさざめく声が響いている。
露天神社の境内に続く、狭い石段を登りきれば。きっと、その秘密がわかる。そんな気がした。
普段は何気なしに通っている階段を登る。向かって左側には絵画。曽根崎心中のモデルとなった、おはつと徳兵衛の二人が身を寄せ合って自分たちを模したパペット人形で遊んでいる。右側には大写しになった悲恋の二人の浄瑠璃人形の写真の下段、イラストで曽根崎心中のストーリーが説明してあるパネルがある。
今の今まで、これほど丹念に境内の入り口から中までの様子を見たいと思っていなかった。
そんなことを感じたとき。
子供たちの声が耳奥から、ふっつりと消えた。